夜にひとりで落とす問い【8月企画SS加筆版】
しばらくして、瀧がぱっと身を離した。ついで足音が聞こえてくる。ノックの音がして、ドアが開いた。樹くんがぱっと顔を出した。
「瀧、タブレットは見つかったか」
「いま、見つかったところ」
「そうか」
瀧が、顔を背けて、タブレットを手に掲げた。ベッドから立ち上がる。樹くんは息をつくと、俺を見て、笑った。
「理央もありがとう。瀧と一緒に、探してくれてたんだな」
「う、ううん。樹くんこそ、ありがとう」
樹くんは、片づけをしてくれてたんだ。俺は、何もしてないから気まずい。瀧は部屋の外に出てくから、俺も慌ててついて行った。
廊下の外にでると、樹くんは、「ちょっと着替えてくるよ」と言った。帰ってからずっと、働いてたから……俺は眉を下げ、見送る。瀧が、俺の手を引いた。
「いこ」
「うん」
お世話になりっぱなしだなあ。俺も、何かできるようにならないと。映画の準備をしながら、俺はぐっと拳を握った。
「瀧、恋愛の映画がいいわ」
「一人の時に見たら」
「また可愛くないこと言うんだから……」
支度が整って、おばさんと瀧は、映画の話をしてる。樹くん、どうしたんだろう。俺はちょっと心配になって、樹くんの部屋に向かった。
「樹くん」
そっとノックする。返事がなくて、眉を下げた。どうしたんだろう。具合が悪いのかな。もう一回ノックすると、扉が開いた。
「すまない。電話がきてな」
「あっごめんなさい」
樹くんが、スマホを片手に出てきた。着替えてる途中だったみたいで、シャツのボタンがあいてた。ふわりと夏のにおいがする。促されて、中に入った。
「ドアは開けたままにしておいてくれ」
「いいの?」
「ああ。一応な」
さっさと着替えだす。俺はドアの近くで、樹くんの背中を見てた。大きいなあ。教室でいつも一緒に着替えてたけど、背がもっと高くなってる気がする。
さっと着替え終えると、樹くんは制服をハンガーにかけ直した。まだ半年だけど、もう堂に入ってる気がする。懐かしいな。
『理央も着てみるか』
って、上着をかけてくれたっけ。樹くんは振り返ると、俺を見て、ふっと笑った。
「どうした?」
「えっ」
「ずっと見てるから。何か困ったことがあったか?」
「えっと」
今日は、ずっと聞かれるな……。俺の顔、そんなに困ってるんだろうか。顔を隠すと、樹くんはそっと俺のところにきた。静かに答えを待たれる。
「えっと、……」
「うん」
樹くんは、おおらかに、ゆったり待ってくれてる。絶対に言えないんだけど、何も言わないのも変かな、そんな気持ちになる。でも、どうしようかな。頭を悩ます。意を決して、顔をあげる。
「あ、あの。俺たち……」
「――兄さん」