夜にひとりで落とす問い【8月企画SS加筆版】
ご飯を終えて、映画でも見ようってことになった。
「タブレット、誰が持ってたかしら」
「探してくる。理央、ちょっと来て」
「うん」
呼ばれて、俺はついて行った。瀧の部屋に入る。相変わらず整頓されて綺麗なお部屋だなあ。瀧は棚からタブレットを取り出す。すぐ見つかったみたいだ。
「瀧?」
瀧が、俺の前で足を止めた。じっと俺を見てる。どうしたのかな。俺が見つめ返すと、瀧は顎でそっとベッドを促した。
「ん?」
瀧がベッドに腰掛けると、ぽんと隣をたたく。座れってことかな。おずおず座ると、瀧はタブレットをつけていじりだした。調子を見てるのかな。俺はそっと様子を見てた。
「どうしたの」
瀧が、俺に尋ねてきた。俺は瀧の横顔をみる。瀧の目は淡々と画面を見てた。
「ずっとふさいでるから。何かあった?」
聞く声は、やわらかい。俺は、胸がじわ、と温かくなった。
「ありがとう。あの……」
そこで固まる。この話は、瀧にはできない。瀧はじっと俺を見てた。綺麗な目に、俺がゆらめくみたいに映ってる。
「俺には話せないこと?」
ぎゅっと手を握られて、息を詰める。何だか、無性に恥ずかしくなってきた。
「えっと。……瀧に、話したくない、とかじゃなくて」
顔が火照ってくる。ええと、どう言ったらいいんだろう。
「言いたくないなら、いいけど。俺には、言えないこと?」
「へ」
「兄さんにも言えないこと?」
「えっと」
真剣に聞かれて、首を傾げた。何故、ここで樹くんが……そう思うけど、瀧の目がすごい強い。
「どうなの」
「う、うん」
何度もうなずく。何を言ってるのかわからないけど、なんだか本当に気まずかった。うつむいてると、瀧が「わかった」と言った。
「おばさんには言える?」
「う、うん」
「そっか」
瀧が、ほっと息をついた。そっと頭を撫でられる。引き寄せられて、俺は瀧の肩にもたれた。瀧の香りが、さっと頭をくすぐった。
「よかった」
瀧の声が、すごく優しくて。俺は気持ちがほころぶ。
「ありがと、瀧」
ぎゅっと抱きしめられて、俺は目を閉じた。