2026年七夕企画SS


 那智くんが俺んちから出てきた。いつもの涼やかな顔に微笑みを浮かべ、背筋を伸ばして歩いてる。俺とお揃いの制服がよく似合ってる。ん? ――制服? 俺は首を傾げる。
 那智くんがこっちを見た。俺に気づいたみたい。目を見開くと、

「希結!」

 と微笑んだ。
 花がひらくみたいなそれに、思わずドキッとする。那智くんは、俺の方へ駆け寄ってきた。

「おはようございます!」

 やわらかい声で、那智くんが俺に言う。俺をやさしく見下ろして、頭を撫でた。少し屈んだ拍子に、さら、と那智くんの髪が揺れた。

「今日は起きられたんですね」
「な、なちくん……?」

 え?
 え?
 那智くん? か、可愛い……。
 いやいや! ていうか何、那智くん、その話し方……。那智くんじゃないみたい。俺はぽかんと口を空けた。那智くんはそんな俺を見て、微笑んだ。

「ふふ。まだ夢の中ですか?」

 下瞼にまつ毛のながい影がおりた。嬉しそうに、俺を見つめる目は、きらきらしてる。

「あ……!」

 その目に、俺の声がうわずった。
 那智くんだ。間違いない。確信を得て、胸がぎゅっとなる。

「那智くんっ」

 思いのままに抱きつくと、那智くんは「希結?」と不思議そうに声を上げる。

「ど、どうしたんですか?」
「ううん」

 那智くんは、なんだかいつもより、おろおろしてるみたい。手はさまよってるし、声も上ずってた。ふわりと那智くんから甘い香りが立つ。いい香り……いつもは涼しい香りの方が強いのに。そこで「あ」と声を上げる。

「那智くん、首輪してるの?」

 那智くんのしなやかな首には、オメガ用の黒い首輪がはまってた。那智くんは、きょとんとして、それに手をやり、「ええ」と頷く。

「オメガですから」
「へっ」

 ど、どういうこと……!?
 那智くん、オメガだってことカミングアウトされてんの? なんで? いつから……!?っていうか待ってそもそも、なんで俺の家から出てきたわけ……!?
 動揺しきりな俺に気づかず、那智くんは「それに」と、はにかんだ。そしてさらなる爆弾を落とした。

「希結の婚約者として、ちゃんとしないと」
「ええっ!?」

 こ!?

「な、なんて?」
「希結の……」

 婚約者!?
 那智くんが俺のっ?

「な」

 なななななな、な〜! なな……何がどうなってんの?
 那智くんが俺と婚約して、俺の家から? えっ? 同棲とかそういうやつ? 俺たちまだ小学生だけど!?
 俺は那智くんの胸にぐりぐり頭を寄せた。だってほら、俺いま動揺してるし……。那智くんは、やさしく背中をなでてくれる。
 や、やば、最高すぎる……。うっとり香りを吸い込んだ時だった。

「ジャマ」

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