2026年七夕企画SS


 小学校の帰り道。
 運転手の巽(たつみ)さんに頼んで、俺は商店街におろしてもらった。この間の笹が、飾られてるのが見えたから。
 近づいて、自分のズラズラ並んだお願い事を確かめる。さすがに苦笑しながら、そのひとつを手に取った。この念が夢になったのかな……。まあ、夢見がちな考えだなとは思うけどさ。
 隣に、那智くんの短冊があった。丁寧にテストで百点、って書いてある。ほほ笑ましくって、手に取ってしばらく見つめる。そして何気なく、俺はそれを裏返した。

「あっ」

 俺は息を呑む。鉛筆書きで、それは書かれてた。

「希結とずっと一緒にいられますように」

 那智くん。
 右肩上がりのきれいな文字を、俺は何度も目でなぞる。
 那智くん。
 那智くん那智くん、那智くん。
 言葉が出なかった。
 笹から取って、短冊を持って帰りたくなった。けど、すんでで止めた。だって、大切なお願い事だから。

 帰ってからもずっと、俺の胸はいっぱいだった。
 夕食の後、部屋の窓を開け、夜の空を見上げる。今年の七夕は晴れ。星はきらきら輝いてた。
 俺は手を合わせて、お願いした。
 那智くん、俺も一緒だよ。

「ずっと那智くんと一緒にいられますように」

 三田さんがお部屋に呼びに来るまで、俺はずっと、お星さまにお願いしてた。


 《完》

6/6ページ
スキ