2026年七夕企画SS
「絶対ぶっ飛ばしてやる……!」
見慣れた天井が、視界いっぱいに広がった。身を起こして、辺りを見回す。あれ? ここは……。
「俺の部屋……」
「坊ちゃま? 今日はお早いですね」
三田さんが起こしに来た。そのあまりに見慣れた光景に、俺はぽかんとする。
「すぐにご飯ですからね」
と、やさしい声と背中を見送った。俺は首を傾げる。辺りを見回し、自分の顔をぺたぺた触った。えーと、つまり?
「夢……?」
夢うつつのまま、朝ごはんを食べて身支度を整える。あまりに見慣れた光景、やり慣れたことにもなんだか落ち着かないでいると、後頭部に衝撃が走った。
「邪魔なんだよ、ノロマ」
言葉の余韻も待たず、沙結兄が去ってく。くそ。毒づくけど、その気持ちもちょっと遠い。
「坊ちゃま、ご友人が」
そこで、俺の意識は完全に覚醒した。ぱっと走り出す。はやる気持ちが、足をむちゃくちゃに急き立てた。
「希結、おはよう!」
「――那智くんっ!」
玄関先、いつものラフな私服姿で立ってる那智くんの胸に、思い切り飛び込んだ。那智くんはいつも通り、ちょびっとよろめいたけど、受け止めてくれる。涼やかな香りのなかに、かすかに甘い香りがする。
ああ、那智くんだ。よかった。夢だってわかってても、はつらつとした様子に、心底ホッとする。
「どうしたんだ?」
那智くんが笑う。いつものキラキラした優しい目で、俺を見つめた。
「んーん」
俺は首を振る。
「那智くん、大好き!」
那智くんのしなやかな素の首に、ぎゅっと腕を回した。