俺だけいつも枠の外
カムバック、俺〜……!
あれから三日。またしても俺は布団に伏せっていた。
う、嘘でしょ〜! 俺人生で、こんなに体調崩したの初めてなんですけど〜? 皆勤賞は夢のまた夢、どうしてくれる、テストだってあるというのに〜。
「うぐっ、」
えづいたのを堪える。はは。泣いても笑っても吐いちゃうとか……。もう独白でふざけることさえ、俺には許されていないってコト? ウケる。……いや、笑い事じゃないよ!
目を両手で覆い、息を細〜く吐き出す。目を閉じても目眩ってするんだね。気持ち悪……。
でもまじで、やばいな。どうしたらいいの? こんなの続いたら、本当に困るんですが。
「いったいなんで……」
よかったじゃんか。皆幸せ、万事円満ってやつじゃんね。なのに、なんでこんな俺は崩壊してんの。いったい、何がいけないというのだ、俺よ。
「はあ……」
袋に胸の悲しみ(仮)を吐き出して、俺は項垂れた。おえ、喉がまじで痛い……。
「せっかく友が元気になったのになあ」
なんかもっと色々、あるじゃんね。皆で遊びに行ったりとかさ……。思い浮かべて、俺はベッドに寝転んだ。ばたんといきたいとこだけど、気持ち悪いから羽根のように、そっとね。
「ないか」
俺と遊びに行くなんて、ないない。いつも、体調よくなったら、友と攻めが遊びに行くんだもんね。まあ、友彼さんは、誘われるかもしれないけども……。自分で言ってて、胸のあたりがじわっと焼き付いた。胸焼けっすか? かなり嫌な感じのやつ。
「はは」
……ここらが潮時、なのかなあ。
涙が滲んでくる。まあ、仕方ないよな。これから何かあるたび、こんなに具合悪くなってちゃかなわんし。しかもこんな、脈のちっともないことで。いや、そもそも昔っから脈なんてなかったんだけどさ!何急に! はは……本当に。
「付き合わなきゃ、よかったなあ……」
それなら、こんなに悲しくなんかないよ。寂しくったってさ。分不相応に、恋人になんかなって。
攻めの一番ポジだなんて、期待したからさ〜!
「……うえ、」
しゃくりあげて、えづいた。堪えたら、背中がバネみたいにはねる。ひっ、と細くて高い音が喉から漏れた。痛い。
苦しい。超苦しい。
そうだよ。そもそも、脈ないんだ。だから、悲しいこともないじゃん。うん、平気平気。なんも変わってない!
「げほっ」
またせき込んでしまう。まただ。めちゃくちゃ、自己嫌悪におちいる。何やってんだろ。皆に心配かけてさ、体調まで崩してるのに。事実を体がのみこみたがらない。
「まだ、期待してるのかな……」
諦めらんないのかな。攻めのこと……ふたりのこと。涙はいつまでも、しょっぱかった。
◇
着替えてたら、ノックの音が響いた。
「はーい」
俺は返事して、着替えのシャツを被った。寝汗がぐっしょぐしょだったから、なんかすごいあったかい。
母さんがそっと、ドアを開けて入ってきた。なんか、デジャヴ。ありがたいデジャヴ。
「受け、大丈夫?」
「うん、ありがとう。もう大分いいよ」
これについては本当。うんざりするくらい泣いたら、さすがに体が立ち直ってきてくれたみたい。よきかな。母さんは、ほっと顔を緩めて、俺にお盆を差し出した。
「ゼリー食べる?」
「食べる!」
母さんが持ってきてくれたのを見て、俺は気持ちがぱーっと上がる。
「さくらんぼのゼリーだ!」
めっちゃレア。朱色の透けたゼリーに、赤い果肉がきらきらしてる。両手で受け取ると、ひんやり冷たい。
「お母さん、ありがとう」
俺がさくらんぼ好きだから買ってきてくれたんだね……。早速すくって一口食べる。
「うまっ」
めっちゃ美味い。いま俺、優しさを食べてる。めっちゃ染みる……。顔が横にのびるくらいニコニコした。果肉うまい。
母さんは、俺の様子を見て「よかったわ」と笑った。
「友彼さんが、さっき持ってきてくれたのよ」
「――うぐぅ!」
ゼリーを吹き出しかけた。母さんが慌てて、俺の背中を擦る。俺は手を掲げて「大丈夫」と示す。
「え、友彼さんが? なんで?」
「さあ……『お世話になりましたから』って。友くんのことかしら?」
母さんの言葉を聞きながら、俺はポカンとしてた。友彼さんが……。意外というかなんというか。
まあ、じゃあ誰が意外じゃないかってーと分かんないけども。
俺はゼリーを見下ろした。
「お礼を言いますか」
ここはひとつ。気合を入れて、放ったらかしだったスマホを見る。およ、通知がエグい。皆ありがとう。
「って、いかんいかん。脱線してる」
皆のメッセージ返してて、忘れてた。ひとまず、友彼さんのトークルームを開いて、お礼を打ち込んだ。
「これでよし」
皆のメッセージに戻ろうとしたとき、通知がすぐにきた。はやっ。
ちょっと躊躇してから、タップして開く。
『いいえ。お加減はいかがですか』
……続くやつ?
「もうすっかりいいです。ありがとうございます」
よし。戻ろうとして、またすぐにメッセージが来る。はやい、はやいよ!
『よかった。今、お時間ありますか』
「……ん?」
俺は首を傾げた。
『病み上がりにすみませんが、お話したいことがあります』
《完》
あれから三日。またしても俺は布団に伏せっていた。
う、嘘でしょ〜! 俺人生で、こんなに体調崩したの初めてなんですけど〜? 皆勤賞は夢のまた夢、どうしてくれる、テストだってあるというのに〜。
「うぐっ、」
えづいたのを堪える。はは。泣いても笑っても吐いちゃうとか……。もう独白でふざけることさえ、俺には許されていないってコト? ウケる。……いや、笑い事じゃないよ!
目を両手で覆い、息を細〜く吐き出す。目を閉じても目眩ってするんだね。気持ち悪……。
でもまじで、やばいな。どうしたらいいの? こんなの続いたら、本当に困るんですが。
「いったいなんで……」
よかったじゃんか。皆幸せ、万事円満ってやつじゃんね。なのに、なんでこんな俺は崩壊してんの。いったい、何がいけないというのだ、俺よ。
「はあ……」
袋に胸の悲しみ(仮)を吐き出して、俺は項垂れた。おえ、喉がまじで痛い……。
「せっかく友が元気になったのになあ」
なんかもっと色々、あるじゃんね。皆で遊びに行ったりとかさ……。思い浮かべて、俺はベッドに寝転んだ。ばたんといきたいとこだけど、気持ち悪いから羽根のように、そっとね。
「ないか」
俺と遊びに行くなんて、ないない。いつも、体調よくなったら、友と攻めが遊びに行くんだもんね。まあ、友彼さんは、誘われるかもしれないけども……。自分で言ってて、胸のあたりがじわっと焼き付いた。胸焼けっすか? かなり嫌な感じのやつ。
「はは」
……ここらが潮時、なのかなあ。
涙が滲んでくる。まあ、仕方ないよな。これから何かあるたび、こんなに具合悪くなってちゃかなわんし。しかもこんな、脈のちっともないことで。いや、そもそも昔っから脈なんてなかったんだけどさ!何急に! はは……本当に。
「付き合わなきゃ、よかったなあ……」
それなら、こんなに悲しくなんかないよ。寂しくったってさ。分不相応に、恋人になんかなって。
攻めの一番ポジだなんて、期待したからさ〜!
「……うえ、」
しゃくりあげて、えづいた。堪えたら、背中がバネみたいにはねる。ひっ、と細くて高い音が喉から漏れた。痛い。
苦しい。超苦しい。
そうだよ。そもそも、脈ないんだ。だから、悲しいこともないじゃん。うん、平気平気。なんも変わってない!
「げほっ」
またせき込んでしまう。まただ。めちゃくちゃ、自己嫌悪におちいる。何やってんだろ。皆に心配かけてさ、体調まで崩してるのに。事実を体がのみこみたがらない。
「まだ、期待してるのかな……」
諦めらんないのかな。攻めのこと……ふたりのこと。涙はいつまでも、しょっぱかった。
◇
着替えてたら、ノックの音が響いた。
「はーい」
俺は返事して、着替えのシャツを被った。寝汗がぐっしょぐしょだったから、なんかすごいあったかい。
母さんがそっと、ドアを開けて入ってきた。なんか、デジャヴ。ありがたいデジャヴ。
「受け、大丈夫?」
「うん、ありがとう。もう大分いいよ」
これについては本当。うんざりするくらい泣いたら、さすがに体が立ち直ってきてくれたみたい。よきかな。母さんは、ほっと顔を緩めて、俺にお盆を差し出した。
「ゼリー食べる?」
「食べる!」
母さんが持ってきてくれたのを見て、俺は気持ちがぱーっと上がる。
「さくらんぼのゼリーだ!」
めっちゃレア。朱色の透けたゼリーに、赤い果肉がきらきらしてる。両手で受け取ると、ひんやり冷たい。
「お母さん、ありがとう」
俺がさくらんぼ好きだから買ってきてくれたんだね……。早速すくって一口食べる。
「うまっ」
めっちゃ美味い。いま俺、優しさを食べてる。めっちゃ染みる……。顔が横にのびるくらいニコニコした。果肉うまい。
母さんは、俺の様子を見て「よかったわ」と笑った。
「友彼さんが、さっき持ってきてくれたのよ」
「――うぐぅ!」
ゼリーを吹き出しかけた。母さんが慌てて、俺の背中を擦る。俺は手を掲げて「大丈夫」と示す。
「え、友彼さんが? なんで?」
「さあ……『お世話になりましたから』って。友くんのことかしら?」
母さんの言葉を聞きながら、俺はポカンとしてた。友彼さんが……。意外というかなんというか。
まあ、じゃあ誰が意外じゃないかってーと分かんないけども。
俺はゼリーを見下ろした。
「お礼を言いますか」
ここはひとつ。気合を入れて、放ったらかしだったスマホを見る。およ、通知がエグい。皆ありがとう。
「って、いかんいかん。脱線してる」
皆のメッセージ返してて、忘れてた。ひとまず、友彼さんのトークルームを開いて、お礼を打ち込んだ。
「これでよし」
皆のメッセージに戻ろうとしたとき、通知がすぐにきた。はやっ。
ちょっと躊躇してから、タップして開く。
『いいえ。お加減はいかがですか』
……続くやつ?
「もうすっかりいいです。ありがとうございます」
よし。戻ろうとして、またすぐにメッセージが来る。はやい、はやいよ!
『よかった。今、お時間ありますか』
「……ん?」
俺は首を傾げた。
『病み上がりにすみませんが、お話したいことがあります』
《完》