「オメガの騎士など認めない」と言われましたが


「はあ……」

 鍛錬場で、ノアはため息をついていた。ノアの周りには、同輩たちが累々と倒れている。

「ひ〜……全然相手にならねえ」

 ジョンがあえいだ。ノアは沈鬱な顔のまま、構えた。

「次、相手を頼む。かかってきてくれ……」
「もう無理だ〜……」

 サムが這って逃げた。ノアは、剣を見下ろした。手にある感触を握りしめる。
 どうしよう。
 どうしたらいいのだ。

「ノアさん」

 耳元で囁かれ、ノアは飛び上がった。

「カイル……!」

 いつの間に。ちっとも気配を感じなかった。不覚に悔しくなるも、後退る。カイルは音もなく、また間合いを詰めてきた。

「考えてくれました?」
「断る!」

 全力で地を蹴っているのに、ちっとも離れない。ノアは、カイルと鍛錬場を飛び交う。カイルは、雲の上を歩くようだ。じっとノアの目を見つめてくる。

「どうしてですか。俺と出てください」
「嫌だって言ってる! 諦めろ」
「やです。ノアさんが諦めてください」

 とん、と地面に降り立つ。間合いを取ろうにも、どんどん詰めてくる。「うう」とノアは唸った。

「――なら、俺に勝ってみろ! そうしたら考えてやる」

 ぴっと剣を向けた。かなり劣勢で言うことでもないが、引く気はない。勝つという意思で臨むのみ。

「勝負だ、カイル!」

 カイルは、黙っていた。黙って、目を伏せる。沈黙。風が、二人の間を抜ける。
 たっぷりの間をおいて、カイルは口を開いた。

「やです」

 ノアは目を見開く。

「ノアさんとは、打ち合いたくありません」
「なっ……」

 にべもない返事に、ノアは叫ぶ。

「俺だと不服だというのか」
「そういうことじゃないです。とにかく嫌です」

 ふい、と目をそらされる。ノアは頭を打たれたように、呆然とした。剣を持つ手が震える。

「意地はらないで、俺のパートナーになってください」

 剣を握る手を、そっと包みこまれた。
 また、いつの間に……。カイルの長い髪が、ノアをかすめる。カイルの澄んだ目に、自分の情けない顔が映っている。
 悔しさに、ノアは殴りかかった。

「――嫌だ! 絶対に嫌だ!」

 腕を取られるが、引かないでもみ合う。カイルはびくともしない。けれども、ノアも引く気はなかった。

「ノ、ノア……」
「ここは甘えておいたほうがいいんじゃないか……」

 ジョンとサムが、おずおずと言う。

「やだ!」

 ノアは叫んで、鍛錬場を飛び出した。

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