「オメガの騎士など認めない」と言われましたが
「パートナーがいない?」
「申し訳ありません、父上……」
父の素っ頓狂な声に、ノアは沈痛に頷いた。あれから、舞踏会のパートナーを皆に頼んだのだ。
しかし、結果は不発。
『わ、悪いノア』
『お前のことは本当に大事なんだが……』
『力になれなくてすまん!』
皆の泳いだ視線を思い出す。何かにひどく怯えているようだった。
「きっと、殿下たちが圧力をかけたに違いありません!」
「なんと汚い……騎士道精神の欠片もない」
「ぐむむ……予想はしていたが」
父は腕組みをする。
友に迷惑をかけるわけにはいかない。怒るリナリアとグレッグをなだめていると、母が首を傾げた。
「なにを焦っているんですの? カイル殿がいらっしゃるではありませんの」
「カイルは嫌です!」
つい高くなった声を、慌てて抑える。「申し訳ございません」と頭を下げた。
リナリアが取り持つように、間に入った。
「ま、まあ気を取り直して。ひとまずドレスの採寸でもしましょう?」
「そうだな。美しい布を見たら、気分も変わるぞ」
グレッグが、家令に目配せする。家令は顔を苦くしかめた。身を絞るように体を狭め、口を開いた。
「それが……」
「――商人が来ない!?」
屋敷が飛び上がるような声で、グレッグが叫んだ。家令は「申し訳ございません」と頭を下げた。
「どこもなしの礫なのです」
「な、なんということだ……」
ブラッド家相手に、こんなことができるのは、王家しかない。一同、これには唖然とした。
そこまでするのか……。さすがに、開いた口がふさがらない。母でさえ、ハンカチを握りしめ、泣いた。
「あんまりな仕打ちですわ!」
「なんと陰湿な……」
ノアも呆然とした。フレデリックもアンブローズも、本気だ。二人は手段を問わず、本気でノアから剣を取り上げようとしている。