「オメガの騎士など認めない」と言われましたが
「……ノアさん」
「……この五年、俺がどんな気持ちだったか」
「カイル、今日こそ俺が勝つ!」
「なんの。俺のほうが強いです」
ノアとカイル。二人は幼い頃より、騎士になるべく、切磋琢磨してきた。
ノアはオメガで、カイルはアルファ。第二性差はあれど、カイルはいつも真剣に打ち込んでくれた。
カイルと打ち合うとき、ノアは何より自由な気持ちになれた。オメガでも公爵家の次男でもなく、一個の命となれた。
きっと、それは、カイルも同じだと思っていたのに。
五年前、いきなりカイルは隣国に遊学を決めた。
なんの知らせもなかった。
「どういうことだ」
と尋ねても、「ごめんなさい」としか言われなくて。ひどく悲しかった。
それでも、王家からの命だったのだと。ノアは、カイルの友情を信じていた。
しかし、カイルがノアのもとに戻ってくることはなかった。ずっと別の部隊に所属し続け、ノアのことを避け続けたのだった。
なのに、最近になって、カイルはまた、ノアに話しかけてきたのだ。
「俺の気持ちなどお構い無しで……お前の気まぐれに、付き合う気はない」
「それは、」
「皆を助けてくれたことは、感謝する。だが、それ以上求めないでくれ」
ノアは、礼をして、足を速めた。ここにいたくない。むかむか、嫌な気持ちになる。
「ノアさん」
ノアは足を止めてしまう。悔しさに、拳を握りしめた。
「舞踏会、俺と一緒に出て」
ノアは、かっと頭が熱くなった。
「誰がお前などと……! バカにするな!」
振り返り、怒鳴る。
「この上、オメガ扱いなんて、まっぴらだ」
「なら、どうするんですか」
カイルの強い声に、遮られた。
「騎士になるのが、ノアさんの夢だったでしょう」
いたいほど真剣な眼差しだった。
「俺なら、ノアさんを助けられます。俺と一緒に出てください」
ノアは、目をつむり、気持ちを必死に抑えた。
「嫌だ」
浅くなる呼吸を、整えた。
「お前と一緒に舞踏会なんて、絶対に出たくない!」
ノアは、背を向けて、その場を去った。