「オメガの騎士など認めない」と言われましたが
「なんというざまだ」
軍の応接室。
フレデリックを前に、ノアたちはかしずいていた。
「少し抜き打ちでテストをしてみれば……試験を通ったからと、たるんでいるのではないか」
「申し訳ございません」
フレデリックは長い脚を組んだ。アイスブルーの目を伏せれば、睫毛が影を落とした。
「成績上位者であるお前たちでその体たらく。試験の結果さえ疑わしい」
「め、滅相もございません!」
「家名ばかり立派なオメガを入れると、やはり浮かれるか……」
上官を睨めつけた。上官は、礼を取る。
「私の不行届です。これからいっそう励みます」
フレデリックは長い溜息をついた。
「このままでは、僕の代で、相当に名を落とすことになろうな……」
フレデリックは立ち上がる。
「ノア」
「はっ」
「舞踏会へとめかしこむのもよいが、真に忠臣なら、もっと考えることだ」
そう言って、部屋を出ていった。ノアは、じっとうつむいていた。握りしめた拳が、震えていた。
部屋を出ると、窓際に大きな影が一つ。怪鳥が、窓から顔を出して、じゃれていた。
サムやジョンが息を呑む。
「話、終わった?」
「はい! カイル様、先ほどはご助力、まことにありがとうございます」
「ん」
頷いて、カイルは手を払った。怪鳥が、名残惜しげに飛んでいく。サムたちは、礼を取って去っていった。必然的に、ノアとカイルだけになる。
沈黙が走る。
ノアは、目を合わせないでいた。本来、褒められた行動ではなかった。
同じ公爵位といえど、王家の血筋を引くカイルはやはり特別な存在だ。騎士として、立派でもない。
カイルは、窓から離れ、ノアに歩み寄った。
「ノアさん」
覗き込まれて、とっさに顔をそらした。カイルは、気にした様子もなく、さらに寄る。
「あなたの部隊がやってくるなど聞いていないが」
「抜けてきました」
「そのような、勝手な真似……」
ノアがとっさに顔を上げると、カイルの目とまっすぐにぶつかった。
「返事が欲しくて。手紙、見てないですか?」
見つめられ、ノアは顔をそらした。
「……そんなもの、知らん」
薬を飲んだように、気持ちが苦る。
「いきなりいなくなった者の、手紙など知らん」
ノアは唇を噛みしめた。