「オメガの騎士など認めない」と言われましたが
それから。
「ノア、ごきげんだな」
「まあな」
鼻歌を歌いながら、ノアは鍛錬場で体を伸ばしていた。
ジョンとサムが、笑いながら肩を叩いていく。
「ごちそうさま」
「機嫌よく咲きすぎるなよ〜」
仲間たちの背中を見送り、ノアは笑う。胸には、花のピンが差してあった。
陛下が特別に、与えてくれたものだ。
「私からの試練を、よく越えてくれた」
そう言って、皆の前で、騎士服に見合うこれを、渡してくれたのだ。
「息子たちは無茶極まりなかったが、貴族たちの内々の不満の芽であることには違いなかった。ここで、そなたには越えてもらわねばならなかったのだ」
ノアは、陛下からの信頼が嬉しかった。立派な前例となれて、心から、満足だった。
フレデリックとアンブローズは、納得してくれたようだ。あれから、顔を見ていないが……思えば、二人が厳しくしてくれたことで、今がある。
家族やカイルにまで、類が及んだことにカッとなったが、終わりよければすべてよし、である。
「ノアさん」
カイルが、ぎゅっとノアを抱きしめた。ノアは、みじろぎ、たしなめる。
「鍛錬中だぞ」
「すみません。婚約したてで浮かれてて」
ノアは唇を尖らせて、そっぽを向いた。カイルはくすくす笑っている。
あれから、カイルとノアは正式に婚約者となった。
ずっと、打ち合っていたカイルと……すれ違っていたカイルと、婚約者となるとは。人生とはわからないものだ。
「つくづく殿下には感謝かもしれん」
外周をしながら、ノアはひとりごちる。
「ん?」
「いや。殿下お二人はどうしてらっしゃるのかと……」
「ああ。部屋の掃除でもしてるんじゃないですか」
「掃除?」
「主に土砂とか魔生生物の相手とか」
「……ああ、殿下は魔生生物を飼ってらっしゃるものな」
「はい」
くすくす笑うカイルは、何だか意味深だった。こういうときは、聞いても答えてくれないので、少々面白くない。
「カイル」
「やです」
「まだ何も言ってないだろう」
「ノアさんの言うことなんて、わかります」
「今日、屋敷に来ないかと思ったのに」
「えっ……!?」
二人は並び立って、ずっと駆けていた。
《完》
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