「オメガの騎士など認めない」と言われましたが
「なあ、ノア……」
「聞かんぞ」
体を伸ばしていると、サムとジョンがやってきた。ノアはふいと、顔を背ける。
「そこをなんとか。なっ」
ジョンが顔を寄せた。友の心配げな顔に、ノアも唇を尖らせる。サムが互いの剣を示し、囁いた。
「なあ、俺たちずっと頑張ってきたよな」
「……ああ」
「これからも、お前とずっと、頑張りたいよ」
「皆、そう思ってるよ」
ノアは目を瞬かせた。サムやジョンだけでなく、皆の気配が、あたたかくノアを包んでいた。
「お前が頑張ってきたからこそ、ここでオメガ扱いは複雑なのはわかる」
「でも、ここはひとつ!」
「皆……」
ノアは、胸にじわりと込み上げてきた。ぐっと、胸の上に拳を握った。
「俺は……」
「なーにを休んでおる!」
高く澄んだ声が、鍛錬場に響いた。かえりみれば、アンブローズが側近を連れ、立っていた。
「ひ、姫様……! }
「今は、殿下じゃっ」
アンブローズはいつものドレス姿ではなかった。シースルーのドレスシャツに、パンツ姿に、髪を一つに結わえている。細身の剣を手に、凛々しい佇まいだった。
「たるんでおるのう。兄上の言う通り、士気が乱れておる」
ふう、と嘆息した。皆一様にかしこまり、控える。
「遊び気分のオメガがいるせいかのう……」
ちろ、とアンブローズの翡翠色の目が、ノアに向けて細められた。
「舞踏会のパートナーは決まったか?」
「それは……」
ノアが口ごもると、アンブローズは一喝した。
「情けない! やっぱり、そなたは軍を逃げ場にしているのだな?」
「め、滅相もございません」
ノアは、頭を下げる。アンブローズは、細剣をゆらゆらと揺らめかした。
「言っておくが、その場しのぎは許さぬぞ」
「えっ」
「そなたというオメガと出るのじゃ。パートナーを務めたなら、その男は、伴侶と名乗ったも同然ということ、覚えておけ」
ノアは、息を呑んだ。周囲も戸惑いの気配に満ちる。
「相手の人生も縛ること、考えて選べ」
「は……」
それは、言われてみればそうだ。しかし。
アンブローズは顎をついとあげ、声を張り上げた。
「お前たちも肝に銘じておけ! 王家の舞踏会にて遊びは許さぬ!」
「は……っ」
ノアたちは礼を取った。礼を取りながら、ノアは地面を見つめていた。なんということだ。伴侶だなんて、そんな……。手が震える。
「わかったならば、よい」
アンブローズは満足げに笑うと、細剣をひゅんと構えた。
「さーて、鍛えてやろうかの」
腰に手を当て、好戦的な笑みを浮かべる。
「わらわに勝てるものはおるかっ!」