「オメガの騎士など認めない」と言われましたが


 敵前逃亡。騎士として、あまりにも情けない。悔しさと情けなさに、ノアは唇を噛み締めていた。こみあげてくる涙を、一生懸命、飲み込んだ。
 また、カイルに拒否された。ずっとそうなのだ。また声をかけてきたかと思えば、打ち合ってくれない。

「俺の何がいけないんだ……」

 わかっている。負けだ。自分はカイルに制圧された。
 剣で打ち合う前にして、自分の負け。敗者の自分に語る言葉等なし。

「だったら、もっと腕を磨くのみだ」

 涙を拭って、気合を入れ直す。

「絶対、カイルに本気を出させて見せる!」

 昔のように。
 そうでなければ、意味などないのだ。これまで以上に鍛錬を積んで、カイルを振り向かせてやる。そう、未来のことを考えて、ノアは固まる。

「舞踏会……」

 舞踏会で花を得なければ、自分はその切磋琢磨の機会もなくなる。そうしたら、騎士の夢も、カイルと昔のようにいる期待も潰える。

「実際、どうする……」

 カイルに意地を張ってはみたものの、自分の状況はこの上なく悪い。

「ドレスもないし、パートナーもいないでは……」

 影がぐんとのびた気がした。木々のざわめきが、なんだか不吉に聞こえる。

「弱気になるな!」

 ノアは首を振る。

「いざとなれば、一人でもでてやる!」

 ノアは勇み、剣を振り上げた。絶対に、この剣を離してなるものか。ひとり掛け声をあげた。

「坊ちゃま!」

 屋敷に帰ると、明るい声の家令に駆け寄られた。

「お聞きください! なんと、カイル殿から、ドレスの申し出が……」
「嫌ですっ!」

 ノアは部屋に一目散に走った。

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