また、明日がくる


 ――朝。ドアを開けると、白いシャツが見えた。ドアの向こうに、瀧(たき)が立ってた。湖面みたいな瞳が、じっと俺を見てる。

「おはよう」
「うん」

 おはよう。
 俺が挨拶を返すと、瀧は一歩下がる。俺は家の外へ出た。鍵をかけると、瀧が俺を促す。そうしてふたり、並んで歩き出した。手をそっと握られて、俺は目を伏せる。

「今日からだっけ」

 しばらく歩いてたら、瀧がぽつりと言った。顔を上げると、瀧は足を止めて、じっと俺を見てた。

「うん」

 頷くと、瀧は「そう」と返した。
 ……覚えててくれたんだ。俺は、胸の奥がじわじわ切なくなる。

「頑張って」

 肩を引き寄せられる。瀧の香りと熱が近くなって、俺はぎゅっと、目を閉じた。

「うん」

 今日から、剣道教室だった。

(中略)

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