十八話 きらきら


「落ち着いた?」

 俺の呼吸が戻って、しばらくして、瀧が俺の頬に触れた。近くから、俺の目をそっとのぞきこむ。静かなまなざしから、俺はかすかに目を伏せた。いま、目を合わせられない。
 そっと、瀧から体を離される。俺は、熱の去った身体を、そっと抱いた。瀧は歩き出さず、カバンを開いて、探ってる。俺は進めず、所在なく目をうろうろさせてた。

「読み込んで」

 瀧が、スマホの画面をそっと俺に見せた。QRコードが表示されてる。見上げると、瀧は静かに目で、俺を促してた。

「もう一度つながろう」

 目を見開く。
 はっきりと、瀧から言葉にされた。俺は、ぎゅっとカバンのひもを握った。汗がはっきり、にじんでる。指先が冷たい。

「あ……」

 どうしよう。そんなの、決まってる。断らなくちゃ……。
 俺はひたすら、瀧のシャツのボタンを見てた。鼓動が響く。つっかえる喉を、一生懸命、突き動かそうとする。

「早く。……この前みたいなことがあると、よくないから」

 瀧の言葉に、俺の言葉が消えた。俺はカバンに、そっと手を伸ばした――。

 瀧は、じっとスマホを見てた。

「ありがとう」

 項垂れている俺の髪を、指先で梳いた。

「これからは連絡するから」

 やさしく頭を撫でられる。肩を引き寄せられ、嗚咽が漏れる。手の力が、いっそう優しく強くなる。

「つらい思いさせてごめん」

 瀧の言葉に、俺は目を伏せて、首をふった。涙がぼろぼろ伝う。

 ――嘘つき。瀧の、馬鹿。
 でも。
 誰が一番馬鹿かなんて、さすがに、わかってた。


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