十六話 ドアを隔てて(瀧視点あり)
家に帰って、俺はポトフを作った。色々考えたけど、理央が食いつけてるものにしようって。
味見をして、障らない味か確認する。
理央は、やさしい味が好きだ。俺と一緒で。
そっと鍋の中、コトコト揺れる野菜を見てた。
「はい、瀧」
出来上がったポトフを小鍋に移したところで、母さんが、さっと、手を差し出した。いつものとおり、理央に代わりに差し入れるつもりらしい。
確かに、渡してるのは俺だけど。俺は少し苦い気持ちになる。母さんから顔をそらして、鍋を手にした。
「自分で行くよ。子供じゃないんだし」
母さんが目を見開く。それから、
「あら……!」
と大げさに声を上げた。手を合わせて、顔中笑顔にして笑っている。
「仕方ないわねえ。行ってらっしゃい!」
拍手でもしそうな様子で、俺を送り出す。眉間にしわが勝手に寄る。いま自分が相当、憮然とした顔をしてるのがわかる。
「……いってきます」
ぼそり、言葉にして。
俺は隣の理央の家へと、玄関のドアを開いた――。
《続く》