十六話 ドアを隔てて(瀧視点あり)
「あっ」
先輩が、向こうに立ってた。俺に気づくと、にこっと手を振ってくれた。俺は慌てて、外に向かった。足がもたついて、ドアにぶつかる。
「先輩」
「やあ。急にすまない」
「ど、どうして」
「心配で、居ても立ってもいられなくてな」
項に手をやって、苦笑する。俺はひたすら、驚いてた。ぽかんとしちゃって口が閉じない。
「あ、ありがとうございます」
俺はもたもたとスマホを握りしめる。もう、顔を合わせてるのに、何もできなかった。
「き、今日は」
謝ろうとしたら、先輩がそっと、手に持ってるものを俺に差し出した。
「これ……」
「よかったら食べてくれ」
おかゆだ。
そう言って、先輩は俺にジャータイプのお弁当を渡してくれた。手に、あたたかな重みがきて、俺はなんだか、視界が滲んだ。目元がじわりと濡れる。
「……ありがとうございます」
これだけ迷惑かけてるのに、持ってきてくれたんだ。気にしなくていいって、言われた気がした。
「どうして」
「うん?」
「……どうしてこんなに、優しくしてくれるんですか?」
なにも、返せてないのに。
俺は一生懸命、瞬きを堪えた。頬が震えるのを、唇を噛んで抑えてた。
「きみの」
先輩の声が届く。よく通る響きに、思わず顔をあげる。先輩は、笑ってた。
「笑顔が見たいんだ」
俺は目を見開く。笑顔……?
「君のことを考えるだけで、俺は幸せになる」
だから、そう言って、先輩は項に手をやった。俯いた顔から、優しく笑う、口元だけのぞいてた。
その笑顔を見てたら。
俺も、つられるみたいに、笑みがこぼれた――。