十五話 切符のゆくえ


 昼休みが終わって、先輩が帰ってく。
 俺は、後について、先輩を見送った。先輩は何度も振り返って、笑っていた。

「よし、頑張るぞ」

 俺は、机に戻り、授業の準備をした。
 先輩はすごいな。優しくて、あたたかくて、強い。大きな、頼りがいのある背中を思い返す。
 あんなふうになりたいな。
 俺は気合を入れた。

 テキストを解いてる。何だか、受験のときみたいだった。毎日、ひたすらテキストに向かってた。先生たちからもらったプリントを見下ろす。
 あの時も、いろんな人に支えてもらって、受験をこえられたんだ。ぎゅっと胸がいっぱいになる。

「頑張らなくちゃな」

 ぐっと、ペンを握り直して、テキストに向き合った。
 きっと一生懸命頑張って、いい成績をとるんだ。受験のときみたいに。そうしたら。
 すっと、項が冷たくなった。息がつまってきて、慌てて、大きく、ゆっくり息を吸う。
 何で……。
 自分の体がわからない。どうして、頑張りたいときに、こんな、辛くなるんだろう。
 頓服を慌てて口に含んだ。
 落ち着いて。
 涙のにじむまぶたを閉じる。息を、ゆっくり何度も何度も吐き出した。
 ――瀧といられる、権利みたいに思ってたんだ。合格って切符が。
 げほっとむせこんだ。ひゅ、と息が戻る。目を固く閉じて、頭を叩いた。
 なんで考えるんだ。悪くなるってわかってるのに。どうして。
 自分の馬鹿さがいやになる。サボりたいから、こんなことしてるのか?

「ちが……」

 背骨と心臓の間に、石が詰まったみたいに痛くなる。
 何も確かめられないまま。

「べんきょう、」

 涙をぬぐって、ペンを握った。かたかた震えて、形にならなかった。


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