十二話 扉のむこう

 
 教室に行く足が、震えていた。

「大丈夫か」
「うん」

 背中を、星が支えてくれる。昨日かけた迷惑が、脳裏によぎる。今日こそ、迷惑かけない。そう思うほど、胸のあたりが不安定になる。
 大きく息を吸った。
 ここで自分に負けちゃ駄目だ。そしたら、学校自体、怖くなる。頑張らないと。
 俺は教室の扉をくぐった。

「げっ」
「休むと思ったのに」

 ひそひそと声が立つ。星たちは、わざと大きな声で話して、俺に聞こえないようにしてくれてた。

 俺の席の周りに、大きな隙間があいてた。座ると、隣の男子がもっと席を引く。

「もっとこっちよっとけよ」
「つーかヒートだと終わりじゃね。こんなに避けてもさあ」
「人生終わるじゃん」

 カバンを抱えて、小さくなった。

「テストも近いのにな……」
「迷惑だよね」

 全部の声が、自分に向いてる気がする。

「あんま言うなよ。またハアハアされるぞー」
「っとにオメガは得だよな。無敵じゃん」

 恥ずかしくて、身の置き場がなかった。薬を飲みたいけど、今飲むなんて、わざとらしい。

「くそったれども」
「理央、外出よう」

 星たちが、肩を組んで外に連れて行ってくれた。
 汗がふきだして、息がうまくできなくなる。

『迷惑だよね』
『真面目にやればいいのに』
『オメガとして許せない』

 ぐるぐる言葉が回って、皆の言葉と重なる。ぎゅっと喉を押さえて、ゆっくり呼吸した。

「ごめん」
「何いってんだよ。理央は一個も悪くねえよ」

 星たちの言葉に、俺は笑う。
 けど、授業が怖くて仕方なかった。
 始業のチャイムがなるまで、星たちは外についていてくれた。

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