十二話 扉のむこう
支度を終えて、家のドアを開けた。
「
瀧が立ってる。昨日と同じ……。俺はまた、固まってしまった。
瀧は、今日は後ろに引かなかった。
代わりに一歩、踏み込んできた。
「倒れたって聞いたけど」
頬を、手に包まれる。体が跳ねた。瀧の熱が、頬にとけてく。
「ごめん」
俺は、うつむいた。どう言っていいか、わからなかった。瀧の空気が、固くなる。
「謝れなんて言ってない」
俺は、息を詰める。ドアを持つ手が、冷たくて重くなった。瀧が、ドアに手をかけた。もう一歩、踏み込まれる。
気づいたら、瀧の後ろに、ドアがあった。
「心配したって、言ってるんだよ」
そう言って、瀧は俺を抱きしめた。息を呑む。頭に、瀧の手がやさしく滑った。
何が起きてるか、わからない。ただ、ずっと身をこわばらせてた。痺れるみたいに、瀧のフェロモンが、思考に入ってくる。
怖い。
どうして、……何で。
震える手で、瀧の服を掴んだ。首を振ると、もっと強く引き寄せられる。
「や、」
「
呼ばれて、涙が込み上げた。いったいどれだけ、繰り返すかわからない。
「瀧……」
痛くて仕方なかった。
目を閉じると、瀧の胸を押した。びくともしなかった。高く、息が漏れる。
「出て……」
それでも、何度も押した。瀧の熱が、苦しい。これ以上、感じていたくない。
瀧は聞いてくれなかった。
「学校、行かなきゃだから……」
何とか理由をつけて、俺は瀧から離れた。外に出ると、瀧を待つ。瀧は、何かいいたげだったけど、外に出てくれた。
涙を拭って、玄関の鍵を締めた。鼻をすする。息がうまく出来なくて、けほりと咳込んだ。
瀧に手を取られる。
「手、汚れて……」
「いいから」
そう言って、引かれた。もう一方の手に、ハンカチを握らされる。
涙の残る目は熱い。瀧に手を引かれて、俺は歩き出していた。