十話 痛いほどの優しさ
昇降口まできて、俺はへたり込んでしまった。視界が真っ白に点滅してる。気持ち悪い。一気に目が回りだした。
馬鹿だ。闇雲に走るなんてしたから。全部がぐらぐら揺れてる。体にびっしょり冷や汗をかいてた。熱っぽいのに、悪寒がしてる。
手が震えてた。走ったせいで切れた息が、どんどん怪しくなる。咳込んで、息が甲高くなる。涙が勝手に出てきた。もう、紙袋しかない。
泣きたい気持ちで、カバンを開いた。
「理央?」
見上げたら、
「どうしたんだよ!」
「しんどいのか?」
膝をついて、背中をさすってくれる。ギターケースが硬い音をたてた。
「大丈夫か! 無理してきたんか?」
「保健室行くか?」
「お前、先生呼んでこいよ」
慌てる友達に、俺は首を振った。星が心配そうに、顔を覗き込む。
「無理すんなよ。顔色悪いぞ」
俺は頷く。取り出した紙袋を、口に当てた。いたたまれなくて、涙がこぼれた。
「うわっなに?」
「邪魔」
通りすがる生徒たちが、顔をしかめて通ってく。
「んだよ」
「具合悪いのが見えねえのか」
皆が怒る。
俺のせいで、星たちまで言われた。
「ごめ……」
「馬鹿、あやまんな」
落ち着け。
そう言って、ずっと背中を擦ってくれた。