七話 どうして瀧
「理央ちゃん」
幼い瀧が、俺を見下ろしてた。とろい俺を、いつも待っててくれた。
「俺は理央ちゃんといられるからいいよ」
優しくて綺麗な目に、俺の切羽詰まってた心は、いつもほどけた。
「大丈夫だよ」
そう言って、頭を撫でてくれた。
「泣かないで。俺はずっと、理央ちゃんの傍にいるから」
「嘘つき……」
気づいたら、フローリングの溝が目の前にあった。記憶が半分くらい飛んでる。寝ちゃったのか、忘れちゃったのか。どっちでも一人の時間では、変わらない。横を向いててよかった。仰向いてたら、危ない。目尻が涙に引きつってる。身を起こそうとして、痛みに顔をしかめる。冷たい床で寝たせいで、体が傷んだんだ。げほっとむせる。酸っぱい味がして、すごく悲しかった。
何も、初めてのことでもないのに。調子が悪いなんて、いつものことなのに。なのに、大きな穴の中に、落ちてくみたいに怖かった。
このまま、ずっと俺はこうなのかな。
瀧のこと、ずっと思い続けて……息も上手く出来ないのかな。皆に迷惑ばかりかけて、学校にもいけない。涙がぼろぼろ溢れる。
大丈夫って、言い聞かせても、どうしても怖かった。だって、自分が自分じゃないみたいで。自分ではもう、どうしようもなかった。
瀧。
助けてって、言いそうになって、唇を噛んだ。太ももを何度も殴りつけた。違う。瀧は、もう、違うんだから。
明日、病院に行こう。先生は、成長期の体を考えて、きつい薬は俺に出さない。でも、何かしたかった。どうにか、治さなきゃ……。ひとり、ずっと取り残されてしまう。
俺は一人、うずくまって泣いた。