六話 対峙(瀧視点)


 俺は前を行く背を、睨みつけていた。

『話がある』

 言ったっきり、志島しじまは、俺に背を向けて歩き出した。
 無視してもよかった。けれども、俺は、志島のあとに続いていた。
 志島の顔が、気に食わなかったからだ。まるで、この場において、自分に主導権があるのだといいたげなそれ。
 志島の足取りに迷いはなかった。声をかけておきながら、俺がついてこないならそれでも構わないといった様子だった。……こいつにとって、俺との対話はいわば「確認作業」なんだ。俺がこなければ、こいつの中で、話は終わったことになるのだろう。自分にとって、都合のいいふうに全てを解釈して。
 ――そうして、こいつは理央りおに。
 拳を握りしめる。目障りな図体が、理央に言い寄る様が、何度振り払おうとも、脳裏にこびりついてきた。
 吐き気がするような不愉快に胸を焼きながら、俺は前をゆく背中を睨んでいた。この勘違い野郎。言いたいことがあるのは、こっちの方なんだよ。いますぐ殴りかかりたい気持ちを抑えるために、俺は激しく心中で毒づいていた。

くぬぎくんと君は、どういう関係なんだ」

 校舎裏にきて、前を歩いていた志島が止まった。そうして、止まるなり、そう切り出してきた。
 俺は目を眇めた。胸の内がざらりとする。何もかもが、気に障る野郎だと思った。

「あんたに関係あるの」

 俺は切り捨てた。俺と理央は恋人だけど、こいつにわざわざ言う事でもない。理央は俺のものなんだから。
 志島が振り返る――そう、振り返った。こいつは今まで呼んでおきながら、俺の顔を見もしなかった。不遜さに怒りを通り越して呆れる。
 広い肩を見せつけるように開き、うんざりするほどいい姿勢で、俺を見てきた。

「言われてみれば、確かに関係はないな」

 そう言った。はっきりと無駄に通る声だった。俺は眉を寄せて、志島を見た。

「君がどう言おうと、俺がすることは変わらないのだから」

 どこまでも真面目くさった顔で、そう言った。俺はじっと睨んでいた。嫌なやつだ。鼻で笑ってやりたかったが、腹の中を聞いてからでないと、気がすまない。

「俺は樟くんのことを愛している」

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