三十一話 断ち切って、いま

 
「あら、さっぱりしたじゃない」

 理容室にきた母さんが言った。俺もはにかむ。こういうときって、どういう顔していいか、いつもわからない。髪はそろえて、ショートにしてもらった。こんなに短くしたの、いつぶりだろう。首もとが涼しい。

「ありがとうございました」

 理容師さんにお礼を言って、立ち上がる。

「うん、前はちょっと長すぎだったものね。おぼこくって可愛いじゃない」

 母さんが、俺の髪を、確かめるみたいになでた。にこにこ笑う目は、懐かしそうだった。俺は、「うん」とうなずく。
 そう、六年生以来だった。もともと、俺の髪は長めだったんだけど、あのときは切りすぎちゃって。母さんは、

「子供みたいで可愛いじゃない」

 って今みたいに笑ってくれたっけ。

「ありがとう、母さん」

 母さんは、目を細めて、俺の頭をなでた。俺は目を閉じて笑った。


 部屋に帰って、課題を解いてた。補習、だいぶ休んじゃってる。ますます、ちゃんとしなくちゃ。ぎゅっと、ペンを握りしめた。ちゃんと訴えて、けりをつけて……。
 ぽきり、芯が折れて、俺は慌てて拾い上げた。


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