三十一話 断ち切って、いま
「理央くん、髪の毛さっぱりさせようか」
起きて、俺の体調を見に来てくれた看護師さんが、言った。何気ない調子を装った声は、ひどくあたたかい。母さんが、隣で頷いた。
「それがいいわね、しゃきっとさせなさい」
「はい」
俺はうなずく。看護師さんは笑って、
「じゃあ、予約取っておきますね」
と言ってくれた。俺は、
「ありがとうございます」
と頭を下げた。
「あんまり切りすぎちゃダメよ。あとでいいとこに整えに行きましょう」
ご飯を終えて、母さんが歯を磨きながら言った。窓の外の、鳥を見てる。俺は、「うん」と頷いた。正直、ちょっと気がそぞろだった。今から、先生に相談することを、考えてた。
「うん、落ち着いてきてるね」
先生は診察を終えて、にこりと笑った。
「ありがとうございます」
俺は頭を下げた。
「信頼のおける人が傍にいると、やっぱり安定するね」
「はい」
先生がカルテを打ち込む音が、部屋に響いてる。
「先生」
先生が、顔を上げる。その優しくて穏やかな目を、俺は見つめた。すう、と息を吸い込む。
「今回のこと、ちゃんと訴えようと思うんです」