三十話 揺れて留まる


 暗くなり出した部屋で、静かに膝を抱えた。腕がひきつって、点滴してる方は下げた。
 ……瀧。
 目を閉じて、思うのは瀧のことばかりだった。いっぱいいっぱいになったとき、瀧の冷たい言葉が、どうしてもよみがえる。
 瀧に昔みたいに優しくされて、向き合いたいって思ったはずなのに。俺は、心のどこかでずっと、「瀧に捨てられた」って思ってたんだ。
 どんな顔をしていいか、まだわからない。先輩に聞いてもらった言葉に、嘘はなかった。自分の執念深さにあきれる。
 なのに。

「もう駄目かも」って思ったとき。浮かんだのは、やっぱり瀧の顔だった。

「……ふ、」

 涙がこぼれる。母さんが帰ってくるまでに、泣きやまないと。
 瀧には言えない。また、言えない気持ちが増えた。わかってるんだ。ちゃんとしなきゃいけない。けど、こればかりはまだ、言えそうになかった。
 窓から見る空が薄赤い。影になってく手を、俺はじっと見つめていた。

 《完》
 
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