二十七話 ふたつの涙
そして今、僕は最低の光景を、目を見開いて見てた。
家の中から出てきたのは、あいつだった。哀れっぽい格好で出てきて……よくもあんな格好で出られる。同情引いて、優しくしてもらおうっていうのが、ありありとわかる様子だ。なのに、お兄ちゃんは、まんまと騙されて、心配そうに慰めてる。
あいつは惨めったらしく泣いて、お兄ちゃんに擦り寄っていた。
視界がぎゅうって、絞られたみたいになった。ついで、頭がガンガン痛み出す。
ぎちぎち、音がして僕の奥歯の音だってわかった。
何あれ。――許せない。
あれだけ言ってあげたのに、また性懲りもなく同情引いて……! しかも、家にまで呼ぶなんて!
さっき、きっと呼び出したに違いない。ああいう手合いのやり方なんて見え透いてる。どれだけ汚いんだろう。許せない。
もしかしたらあいつ、お兄ちゃんを家に連れ込むかもしれない。それで……。
怖気が走った。
きっとそうだ。あの手合いは、寄生するためになら、何だってする。お兄ちゃんが汚される。お兄ちゃんは、馬鹿だから全然、気づいてない。
僕がこんなに、心配してるのに……!
ぶつりと音がして、唇を喰い破っちゃったんだってわかった。ああ、馬鹿だ。お手入れ頑張ってるのに……。
何も努力しない奴が、こうして得し続けて……!
許さない。
許さない許さない許さない……!