二十六話 答えを持たない


 頭の中。ずっと佐保さほちゃんの言葉が、こだましていた。
 ――あなたに消えてほしいって、皆思ってるんですよ!
 違う、そんな――

「――くぬぎくん?」

 呼ばれて、俺は顔を上げた。隣の先輩が、心配そうに俺を見てた。さあ、と風を感じる。

「大丈夫か」
「は、はい」

 俺は慌てて首を振る。
 いけない、またぼーっとしてた。あれから二日経って、今は先輩とのお弁当の時間だった。俺はあらためて、笑顔を浮かべた。

「すみません。何でもないです」
「そうか?」

 先輩はじっと、俺のことを見た。でも、俺がずっと笑ってると、

「無理をしてはいけないぞ」

 って言ってくれた。俺のために引いてくれたんだって、はっきりわかった。俺は、恥ずかしくなる。
 手元を見れば、取り皿にのせたおかずは、全然食べられてない。
 何やってるんだろう。せっかく先輩が、作ってきてくれたのに。その上、心配までかけて……。こんなんじゃ、駄目だ。気を抜いたら、指先が震えだす。息を詰めて、落ち着かせた。
 ちゃんとしなくちゃ。ちゃんと……。強張る頬をなだめ、箸を動かした。



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