二十二話 夏休みを前に


 今日も道場で、せっせと俺は練習に励んでいた。
 焦らない、はやらない。なんでも、一歩ずつ。でも、進んでれば進むから。実際に、確かに進めてる気がする。一歩ずつ、一歩ずつ。
 ふうと汗をぬぐう。前髪やまとめた髪から、ぽたぽた汗が滴った。俺は慌てて、タオルでそれらを拭う。
 髪、ちょっと邪魔かもしれない。最近練習中に、そう感じるようになってきた。汗も落ちるし、切っちゃった方がいいのかな。
 でも……。
 俺は湖面みたいな瞳を思い浮かべる。
 切ったら、顔を隠せなくなる。もちろん、焼け石に水なのは、わかってるけど。ぎゅっと、前髪を引っ張る。

『気持ち悪い』

 ……今、優しくても。
 また、がっかりされるかもしれない。はっきり、顔を見られたりしたら――。

「理央くん? 大丈夫かい」
「は、はい!」

 先生に声をかけられて、俺は慌てて、練習を再開した。可愛くてお似合いな影を、振り払うように。



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