相反してせめぐ中に(希結×那智)
「
俺は那智くんの背に飛びついた。那智くんは、見たことないくらい悲しい顔をして、頷いた。
「本当だよ。週末には、向こうに行く」
「そんな……」
あんまりにも急だった。
那智くんの顔は、悲しいのを一生懸命押し殺してた。何度もそういうことを、経験してる顔だった。
「ここでは長くいられたから、ずっとこうしてられるかもって思ってた」
空虚に笑って、俺の頭を撫でた。唇を結んで、俺の顔をじっと見つめた。
「
「やだ」
「急にさよならで、ごめんな。元気で――」
「やだ!」
俺は泣きながら抱きついた。
「行かないで那智くん! 離れたくない!」
那智くんは、「希結」と驚いた顔をした。俺は必死に見上げて、頼み込む。
「どうしても行かなきゃいけないなら、俺も連れてって! 那智くんがいないなんてやだ!」
「希結……」
困らせるとか、何にも考えられなかった。那智くんと離れるなんて考えられない。嫌だ。絶対にやだ。
那智くんは、そっと俺のことを抱きしめた。
「ありがとう。さみしがってくれて」
「那智くん」
「希結のこと大好きだよ。毎日楽しかった」
「そんなふうに言わないで!」
そんな、別れが決まった言い方。
けど見上げてハッとした。那智くんは、泣きそうなのを一生懸命堪えてた。俺のために一生懸命お兄ちゃんの顔で笑ってた。
那智くんが俺の涙をぬぐう。じっと俺の目をのぞき込んだ。
「ごめんな。希結のお願いは聞けない」
「那智くん、」
「俺にも希結にも、家族がいる。俺は子供だから、希結と一緒にいられない」
ごめん。
そう言って俺を抱きしめた。那智くんの声は、涙に震えてた。
俺はぎゅっと那智くんを抱きしめた。涙が止まらなかった。
何で俺たち、子供なんだろ。
何で自由にできないんだろう。
泣いてる俺に、那智くんは「大丈夫だよ」と言った。
「俺より仲のいい人、たくさんできるよ」
俺はカッとなって、那智くんの胸を叩いた。
「那智くんの代わりなんてできっこないよ!」
「……希結、」
「何でそんなこと言うの!?俺には那智くんしかいないのに……!」
ぽかぽか叩くと、那智くんは、くしゃ、と顔を歪めた。
「ごめん」
「せめて、また会えるって言ってよ! 那智くんの馬鹿……!」
「希結」
「わあぁん……!」
すがりついて泣いてると、那智くんは、ぎゅっと俺を抱きしめた。染み入るみたいに切ない抱擁だった。涼し気な香りに、泣きそうなほど甘い香りが混じる。
那智くんは、泣いてた。俺は、何度も那智くんの目元にキスをする。那智くんは切なそうに笑ってた。
「ありがとう」
それだけ何度も言った。
「約束して。ずっと忘れないって。また会えるって」
「うん」
俺は、小指を差し出した。那智くんは笑って、指を絡めた。
「きっと希結のこと忘れない。また会おうな」
俺達は抱きしめあった。
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