那智くんといること(希結×那智)


「わー、美味しそう!」
「そうだろ! もう少しで出来るからな」

 おやつにって、那智くんはホットプレートでたくさんの焼きそばを焼いてくれた。
 勉強で疲れたお腹がものすごく空く。俺はもともとすごい食べるから、那智くんはいつもたくさん準備してくれるんだ。ホットケーキとか、お好み焼きとか、色々。

「おいしい」

 幸せと一緒に、ソースのきいた焼きそばを噛み締めてると、那智くんがすごく眩しそうな目で俺を見てる。

「那智くん?」
「うん。希結は美味しそうに食べるなって」

 そう言って頬杖をついて俺を見る那智くんは、大人っぽかった。こういうとこドキッとする。
 那智くんも、自分の焼きそばをちょっとずつ食べ始めた。那智くんは身長のわりに余り食べない。格好をつけて食べてる風に見せてるけど知ってる。

 目が合うと、にこって笑ってくれる。

「美味しいな」

 俺といるのがすごく嬉しいって顔。那智くんは、家でだと特にこういう顔をする。ぎゅっと切なくなる。

「那智くん、料理上手だね」
「そうか? ありがと」
「他の友達も、褒めるでしょ?」

 俺の窺う言葉に、那智くんはちょっときょとんとした。それから、にこにこ笑う。

「そうだな。調理実習では褒められるときもあるかも」
「作ってあげないの?」
「うん。希結にだけ」

 そう言って、口もとを拭ってくれた。
 別に俺の口は汚れてなかったけど、那智くんの様子で照れ隠しだってわかった。言いながらちょっと照れてきたみたい。

「何で?」
「んー……だって家に呼ぶのが希結だけだもん」
「何で?」
「何でって……」

 那智くんは顔を赤くした。そんなに突っ込まれるとは思わなかったみたい。おろおろ目が泳ぎだす。

「その、友達呼ばないんだ。家族は、家に人が入るの好きじゃないから」
「那智くん、僕も人だよ?」
「そ、そうだけど! 希結は、その……」

 真っ赤になって、ごにょごにょ言う那智くんに、ぱっと詰め寄った。気持ちを抑えて、寂しそうな顔をする。

「僕、来たらよくない?」
「そ、それは平気! ちゃんと聞いて、いいって言ってもらったから」

 安心してくれ、と俺を励ます那智くんに、俺はものすごくのどが渇いてた。
 那智くん、今自分が何言ってるか、わかってる?
 俺のことは特別で、家に入れてもいいって言ったんだよ? すっごく胸の奥から気持ちがこみ上げてた。

「そっかぁ。ありがと、那智くん」

 何も知らない子供のふりして、にこっと笑うと、那智くんも調子を取り戻して笑った。
 可愛い。可愛い、那智くん。
 俺は唇を舐めた。


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