那智くんといること(希結×那智)


 それで、俺は那智くんの家に呼ばれて勉強してる。
 那智くんちはいつもすごく静か。ときどき家政婦さんがいるくらいで、那智くんはいつも一人でいる。

 那智くんの家族は芸能一家らしくて、あちこち飛び回ってるんだって。すっごいしーんてしてる家は、子供一人分くらいの生活感しかない。家も忙しいけど、いつもうざったいくらい誰かしらいるから、この家の静けさは那智くんらしくなくて驚いた。

「寂しくない?」

 って前に聞いたら、

「さみしい。だから友達たくさん作るんだ」

 って、那智くんは笑ってた。

 目の前でテキストを解いてる那智くんを見る。
 涼し気な目元は、伏し目がちだとまつ毛が影を落としてすごく綺麗。俺の解いてるのより、ずっと易しいテキストだけど、那智くんは真剣に解いてた。
 それでも目が合うと、にこって笑ってくれる。

「わかんないとこある?」

 って。可愛くて、ちょっと悪戯したくなった。

「ここがわかんないんだけど……」
「うん、どれ?」

 にこにこ見た那智くんが、ぎょっとして、黙り込む。
 俺にいいとこ見せたくて、うんうん一生懸命悩んでるのを、たまんない気持ちで見る。可愛い。食べちゃいたい。
 困ってるのを見せないように、落ち着いた顔してるけど、何度も首をひねってる。

「む、難しいなあ……」

 しばらくして、たまりかねたみたいに、顔を赤くして困ったみたいに笑った那智くんに、俺は笑った。心の中は、飛びついて噛みつきたいのを必死に抑えてた。
 那智くんは、俺が悪戯したことも気づかないで、「希結は賢いなあ」って恥ずかしそうに笑ってた。

「僕、賢い?」
「賢いよ。正直、俺全然わからないもん」

 クラスでは勉強できる方なんだけどなあって、頭をかいて苦笑する。
 那智くんだって、解き方を知れば出来ると思うけど、でも、可愛くて仕方ないからこの顔をずっと見せて欲しい気もする。

「お父さんとお兄さんは希結に期待してるんだな」

 そう言って頭を撫でてくれた。
 優しい言葉が、あんまりくすぐったくて、俺も笑った。

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