安心毛布だと思ってたら伴侶にされた


 言葉は、最後まで形にならなかった。
 リーズにキスされていた。

「んぅ……!」

 抑え込まれるみたいにされて、苦しい。ぼくは握り合わされた手を、ぎゅっと握った。ぼくの指の間に、リーズの指がある。変だ、全部が変。
 リーズの舌が、ぼくの口の中をたどる。不思議な感触に、体が跳ねた。

「んっ、ん……っ!」

 ばたばた足をばたつかせるけど、足の間に入りこまれてて動けない。魔法を使おうにも、リーズ、ずっと無効化魔法かけてきてる……!

「うー……!」

 体に手を這わされて、ぼくはやだやだと首を振った。

「リーズ、だめだってば……!」
「やだ。パージは俺のものなんだから」
「だめ、だめだってば!」

 足の間を撫でられて、ひっと息を呑む。何をする気なの? ただすごく怖いことだけはわかる。

「やだ……! だめ……!」

 リーズは聞かない。詠唱すると、ぼくの手をひとまとめにして、拘束した。

「やあ……!」
「大人しくして」
「なにするの!?やめて、リーズ……!」
「パージを俺の奥さんにするの」

 ぼくの奥に触れた。
 それでリーズの意図が完全にわかって、ぼくは真っ青になる。これは、つまりその……! 教科書で読んだ……。

 リーズはぼくと、「夫婦の契」をしようとしてるんだ。
 ぼくは必死に暴れる。
 今宵は満月。誓いには十分すぎる引力だった。

「やだ、だめだめ! だめ……!」

 ぼくは泣いて暴れた。そんな、安心毛布と契るなんて、そんなだめ……!
 ぼくは一生懸命、冷静になれって言った。大人にならなきゃって、繰り返した。
 リーズは聞いているのかいないのか、ただ笑ってた。

「おとなになるよ。今からパージと」
「だめっ……! や、やだ……――!」

 泣いても叫んでも、聞いてもらえず。

 ぼくはリーズの奥さんにされてしまった。リーズは月にぼくとの未来を誓い、ぼくと契った。
 安心毛布と、こんなこんな……。リーズの人生が……。ずっと泣いてるぼくに、リーズは嬉しそうにキスをした。

「大好き、パージ」

 これでずっと一緒。
 ぼくは、ずっと泣き続けていた。
 ずっと守ってきた、かわいいリーズ。こんな、最後にこんな落とし穴があるなんて……。
 ぎゅっと抱きしめられて、今は同じ肌を持ってるんだって実感する。
 なんとか契を解除して、離れてあげなくちゃ……ぼくは決意した。
 リーズは、ぼくの体を、いつもみたいにしっかり抱きしめて、安心しきった顔で眠ってた。


 《完》
3/3ページ
スキ