君の一番になりたい

 
 それから、攻めが受けに話しかけてくるようになった。自分が傍にいるの許してくれたんだって、切なくも嬉しかった。
 攻めくんは、失恋のどうにもできない寂しさを、俺と共有しにきてるのかも。
 その相手が自分の場合、攻めだというのが切ないけど。それでも頼りにされて嬉しかった。
 攻めは、受けに振られた理由を教えてくれた。

「自分がいなくてもいいでしょ、だって」

 攻めは笑ってた。笑うしかないって顔だった。受けは、静かにそれを聞いて悲しくなった。

「つらかったね」

 それしか言えなかった。悲しいすれ違いだ。きっと攻めくんをすごく好きだっただろう恋人さん。攻めくんが、こんなに思い詰めてることを知らないのは悲しかった。

「わからないよ。俺にはあいつだけだったのに」
「うん、わかるよ」

 痛いほど。受けは俯いて、黙り込んだ。泣きそうになってきて、拳を握って耐えた。

「攻めくんの気持ち、話してみたら?」
「もう遅い。他のやつと付き合ってる」
「え」
「優しくて、自分を好きな人だって」
「そっか……」

 残酷なことを言ってしまった。受けは黙り込んだ。攻めは、「ねえ」と聞いてくる。

「どうして好きでいられるの」

 受けは顔を上げる。

「報われないのに、どうしてずっと好きでいられる?」

 攻めの問いに、受けは泣きたくなるのを堪えて笑った。

「攻めくんが知ってるでしょ」
「俺と君が同じ気持ちなら、半分は俺を恨んでることになるよ」

 攻めの目に苦痛が交じる。受けは、じっと見つめる。言葉を必死にたぐった。

「わからない」

 自分だって忘れようとした。けど。

「攻めくんが、ずっと攻めくんだから」

 それしかなかった。

「ずっと俺の中の好きを更新し続けるから」

 しがみつくとか、離しがたいそういうのでもなくて。
 ただ、ずっと一番なだけなんだ。
 受けの言葉に攻めは俯いて、

「そっか」

 と応えた。それから静かに黙り込む。
 受けは、黙ってた。傍にいて、いいのかな。一人にしたほうがいい?
 迷ってると、攻めが受けを呼んだ。

「もう少しだけ、傍にいて」

 受けは、目を見開いて――「うん」と頷いた。

 攻めに付き合ってほしいと言われたのは、それからすぐのことだった。

「受けくんは、恋の忘れ方はないって言ったけど、俺はこれが答えだと思う」

 それが告白の言葉だった。受けは、頷いた。恋が叶ったかはわからない。けど、攻めの支えになれるなら、それで十分だって思った。

 付き合うようになって、攻めはもっと優しく受けに接するようになった。甘いと言って差し支えなくて、恋人にはこうなんだって思った。嬉しくて、切なかった。いずれ、攻めくんが恋を忘れたら、終わる関係かもしれない。
 だったら、今を、ひとつひとつ、覚えていたい。
 積み重ねていきたい。
 受けは差し出された手を握った。

「攻めくん、好きだよ」

 こうして隣で、好きって当たり前に言える幸せを、抱きしめてたい。
 攻めは笑って、

「俺も」

 と言った。その笑顔があまりに綺麗で。
 もっともっと、好きになってしまった。

 《完》



 
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