あの日にまだ縋ってる3


たき!」

 俺は、瀧に駆け寄った。瀧は、振り返ると、優しい顔で笑ってくれた。俺は嬉しくなって、瀧の腕に抱きついた。
 その瞬間、瀧が俺を突き飛ばした。

「気持ち悪い。うっとうしいんだよ」

 冷たい目で、瀧が俺を見下ろしていた。

 ◇

 目が覚めた。瞬きすると、だんだんクリアになる視界に、天井が映る。そこは見慣れた自室の生成り色をしていた。
 ……そうだ、昨日退院して、帰ってきたんだった。俺は納得して、身を起こす。ずっと寝っぱなしだった体は、固くて重かった。どうにか起こすと、ゆっくり伸びをする。
 今日から学校に復帰するんだ。しっかりしなきゃ。
 結局、二週間以上休んでしまった。診断書を書いてもらったので、申請は通ったけど、これからまた補習とレポートの日々だった。
 母さんにも結局、ものすごく心配かけちまったし。高校生にもなって、二度手間をかけるなんて、最悪だ。具合悪いくらい、ちゃんと言えないといけないのに。救急車まで呼んで、入院までの騒ぎになるなんて……。
 情けない。今度こそ、ちゃんとしないとな。
 俺は気合を入れ直し、ベッドから下りた。



理央りお〜! 久しぶりだな!」
ほし、みんな……! ありがとう」

 クラスに行くと、机に座ってた星たちがぱっと振り返る。顔を明るくして、駆け寄ってきてくれた。久しぶりの学校に緊張していた気持ちがほぐれた。俺は嬉しくて、にこにこ皆のハイタッチを受けた。

「入院したって聞いてビビったぞ。平気か?」
「うん。ごめんな心配かけて」
「よかったよ。こうして顔見れてさ。そうだ、ノート見せてやるよ」

 言うなり、皆がそれぞれノートを取り出した。俺は、目を丸くしてそれを受け取る。

「ありがとう、こんなにたくさん」
「皆一教科ずつ持ち回りでな」
「嬉しい。すごい助かる……」
「あんま期待すんなよ。星のはいいけどこいつのは悲惨だな」
「うるせ、ないよりましだろ」

 俺は嬉しくて、ノートを抱きしめた。じわりと胸にあたたかいものが込み上げる。思わず涙をこらえた。

「朝からうっせ」
「オメガは楽でいいよなー」

 背後から誰かの囁きが、刺さった。俺は硬直する。星たちが顔を強張らせるのを、首を振って止めた。
 俺だから言われるのか、オメガだから言われるのか――たぶん俺だからだけど――確かに、毎日授業に出てテストも受けてる生徒たちからすると、面白くないんだと思う。

「理央。気にすんなよ」
「うん、ありがとう」

 ちゃんと頑張らないとな。
 皆と同じ単位もらってるんだし。
 一生懸命、頑張ってれば、気持ちだって紛れるから。

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