あの日にまだ縋ってる(瀧視点)


 面会謝絶。
 扉の前で、俺は立ち尽くしていた。母さんからの見舞いの品と、花束の存在をやけに手に感じる。
 学生服で来てるのが珍しいのか、看護師が俺をちらちら見てる。

「あの、この部屋は面会謝絶でして、特にアルファの方は、入れませんので、ご了承ください」

 そういう申し訳なさそうな看護師の目に、秋波を感じて不愉快になる。俺はすぐにその場を去った。

 理央りおが、第二性による不調で寝込むのはいつものことだ。
 けど、こんなに状態が悪くなったのは初めてだ。
 ――それとも、前からこうだったのか? 母さんから聞いただけでは、やっぱり不確かだったのだろうか。
 外に出て、白い建物を見上げる。
 おばさんは多忙だから、そうそう見舞いには来れないはずだ。なら、理央はずっと一人、白くて薬っぽいところで、眠るのか。

 胸が締め付けられるような心地だった。

 蘇るのは、保健室での理央の姿だ。
 理央は、ひどい過呼吸を起こして、泣きながら喉を掻きむしっていた。喉元と、爪先の怪我にも気づかない様子に、俺自身も、ひどく動揺した。
 気づいたら、理央を抱きしめて、なだめてた。自分の行動に、疑問を抱く余地さえなかった。理央が落ち着いて、息ができるようになって、心底安堵して。
 冷淡な養護教諭にも、噛みついたと思う。
 ぼろぼろになっている理央を、守らなければ。その一心だった。

 ……いまにして思えば、すごく俺らしくて、俺らしくない行動だ。
 まだ、理央にこんな風にすることが、俺にもできたなんて。

 理央には、ずっと、優しくすることができないでいたから。



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