あの日にまだ縋ってる
俺が何でこうも最近へこんじまうかと言うと、わかってる。
瀧の新しく出来た友達のせいだ。
佐保ちゃんって言って、オメガの男子なんだけど、とにかく可愛い。オメガの中のオメガって感じの見た目で、本当に可愛い。
オメガってバレると気持ち悪いって顔をされる俺とはえらい違い。
で、まあとにかくその佐保ちゃんって子は可愛くてたぶん瀧のこと狙ってる。
マジっぽくて俺のこと本当に瀧のために迷惑だって思ってるのがわかる。
俺と瀧は付き合ってんだから知らねえよなんだけど、パシられてるのが事実ならこんなに頼もしい友達はいないよなってくらい。
初め、
「幼馴染で兄代わりだっていうなら、瀧くんを思って離れてあげてください」
って頭下げられた時は、心が泣いちまったよ。
まあ俺がいっこうに聞かねえから、佐保ちゃんの中での俺の評価は地に落ち続け、今となっては虫を見るような目で見てくるんだけどよ。
まあとにかくいい子だし、あんな子を恋人にできたら幸せだろうなって俺でも思うもんな。
それで瀧はそれが出来る立場なんだ。
けど、俺は絶対にこの場所を譲りたくねえって思ってる。ガキの頃からの約束を振りかざすなんて、迷惑極まりないのかもしれねえけど、本当に好きなんだよ。
「俺の
って、言われた日のことも、結婚式の真似事でキスされた日のことも、忘れられねえ。
瀧はとっくに食べ終わってて、気怠げにスマホをいじってた。俺は食う気が失せて、パンを袋にしまった。新しく飲みだした抑制剤の副作用のせいかな。最近飯が喉通らねえ。
それでも、食べ終わったって思われたら、瀧は立ちあがって教室に戻っちまうから、お茶をもたもたすすってた。
「もう食べないんですか」
聞かれてぎくりとする。スマホ見てると思ったのに、バレてたみたいだ。
「いや、食うけど」
慌ててまたパンを取り出して食べる。すると、瀧はため息をついて、またスマホをいじり出した。
何だかそれが凄く悲しくて、俺は胸に詰まって、また食べられなくなった。
話しかけても全然響いてくれないし、昔は、ずっと話が尽きなかったし、何も話さなくても楽しかったのに。
「食えねえし帰るわ」
抑制剤のせいかな。
いつもみたいにへらへら絡めない。俺は立ちあがって、階段を降りた。瀧は、追いかけてもくれず、ゆっくりとスマホをいじりながら立ちあがって歩き出した。