あの日にまだ縋ってる32
そうして、朝が来て。
俺は、退院が決定した。一息ついて、俺は退院の手続きを済ませた。荷物の確認をして、皆にお礼を言う。あらためて挨拶は、また母さんとすることになってる。
俺は丁寧に頭を下げ、病院を後にした。
送迎バスを降りて、家への道を歩く。すう、と息を吸って、ゆっくり吐き出した。大丈夫。ここは、あいつらと会った道じゃないから。
『俺ら、家知ってんだからな』
ぎゅっと鞄のひもを握った。スマホを取り出して、いつでも通報できるようにして歩く。大丈夫。大丈夫。あたりをにらみながら、俺は歩いていた。
家が見えた。
遠目に見て、誰もいないみたいだった。ほっとして、俺は歩を進める。家の周りにも、誰もいない。息をついて、俺は空いた手で、鍵を探った。
さっと家に入って、これからのことを考えよう。鍵を、錠にさそうとしたときだった。
「理央」
心臓が、大きく脈打った。きしむみたいに、振り返る。
瀧が門の前に立っていた。