あの日にまだ縋ってる24
とは言うものの。
俺は武道場を、そっと覗いていた。防具姿の先輩を見つめる。遠くからでもわかる、すごく真剣な気配は、日々すごくなってるんだ。
いま、話さないほうがいいかな。でも、予定とか、詰まっちゃうかな……。先輩は皆に慕われてるから。
鋭い動きを、じっと見ていると、向こうから剣道部員の生徒たちがやってきた。
「こんにちは」
俺は挨拶して、さっと脇に避ける。数人から挨拶が返ってきた。ちょっとホッとしてると、最後に舌打ちが聞こえた。
思わず顔を上げると、鋭い目で俺を睨んでた。顔を見てわかる。俺と同じクラスの人たちだった。
「気が散るんだよ」
「授業も出れねえくせに迷惑だよな」
胸の奥がすくんだ。
「すみません」
慌てて武道場から離れる。昼の日差しが、ざあっと降りてくる。一気に汗がにじんできた。どうしよう。咄嗟に離れちゃったけど……もうすぐお昼だ。でも。
行っていいのかな。
先輩は、来てくれって言ってくれた。けど、やっぱり迷惑かもしれない。皆、頑張ってるんだから……。
武道場を遠くから見つめてると、校門の方から、颯爽と誰かが武道場に近づいてきた。俺はその姿を認めて、「あっ」と声を上げる。
「こんにちはーっ」
高らかに澄んだ声で、武道場に向けて挨拶する。
「志島さん!」
「弟さん、お疲れさまです!」
「もう、佐保って名前があるんですよっ!」
武道場が、遠目にも明るい気配になる。佐保ちゃんは遠目にもすごく綺麗で、宝石みたいに輝いてた。
「皆さん、お疲れさまです。これ差し入れです」
佐保ちゃんは保冷バックから、差し入れを取り出した。ピンク色のタッパーに、部員の生徒たちが歓声を上げる。
「うわあ、ありがとうございます!」
「皆、並んで礼!」
「ありがとうございます!」
「いーえっ」
佐保ちゃんはタッパーをあけて皆に勧めた。皆差し入れをいただいてるみたいだ。皆すごく、嬉しそうだ。
「本当に気が利くよな」
「いい弟さんですね」
「佐保くん、しかし制服で来ないといけないよ」
「先生! いいじゃないですか! 似合ってるし」
佐保ちゃんは、私服で来てた。いつもと違う装いは新鮮で、夏の暑さなんてまったく感じないみたいに可愛い。佐保ちゃんは、いたずらっぽく笑った。
「えへへ、すみませんっ。着替えてきます」
「制服持ってるの!?」
どっと皆が笑った。本当に、皆たのしそう。ずっと張り詰めてたものが、リフレッシュされたみたいだった。
俺は、自分のつま先を見つめた。
恥ずかしい。俺、自分のことばかりで……。俺がちゃんとしないと、先輩にまで迷惑かけちゃうんだ。佐保ちゃんの輝きで、はっきりわかった。
汗をぬぐう。未練がましく見てたせいで、すごく額が火照ってた。ちょっと木陰に行こうかな。まだ、時間があるし。
「