あの日にまだ縋ってる19


「わあ」

 道着姿で、俺はみんなと並んでた。

「よろしくお願いします!」

 一斉に頭を下げる。すごい。俺はすごく、どきどきしてた。なんだか、自分が自分じゃないみたいだった。
 俺は道場の端で、教えてもらったすり足を、同じ初心者の子たちと、せっせとくり返す。

「いいなー」
「はやく竹刀振りたーい!」

 言いながら、みんな一生懸命だ。
 あちこちで、楽しげな気合の声が響いてる。はだしで動くなんて、あんまりしたことない。ぱたぱた、着慣れない道着がはためいてた。夢中になって繰り返してると、休憩になった。
 息をつくと、すごい汗でいっぱいなことに気づく。息もあがってた。こんなに動いたの、いつぶりだろう……。汗を手の甲で拭った。軽く結わえた髪まで濡れてた。ちいさな女の子たちが、てて、と駆け寄ってきた。

「お兄ちゃん」

 見上げられて、俺は首をかしげる。女の子たちは、頬を真っ赤にして、互いに肘でつつきあってる。俺が、「こんにちは」とあいさつすると、にこにこ笑った。

「はじめてきたの?」
「いくつ?」
「お名前は?」

 いっぱい聞かれる。勢いにちょっと驚きながら、俺は、一個ずつお返事した。

「はい。理央です。十六歳になります」

 女の子たちは、わあっと声を上げた。

「りおくん?」
「いつきくんと友だち?」
「ここ来るの!?」

 ぴょんぴょん、とんで聞かれる。後ろから、「こらこら」と声が聞こえた。

「樟くんを困らせるんじゃない」
「いつきくん、くちうるさーい」

 女の子たちが、手を挙げて唇をとがらせた。

「くぬぎくんてだれ?」
「理央くんのことだ」
「りおくんの名字?」
「はは、休憩終わるぞ。お水でも飲んできなさい」

 先輩の言葉に、女の子たちが「はーい」と手を挙げた。手を振って、元気に駆けてく、まっすぐな背中を見送ると、先輩が苦笑した。

「すまない。みんな懐っこくてな」
「いえ」

 俺は首を振る。

「かわいいですね」

 明るくて、すごい元気いっぱいだ。めいっぱい浮かべた笑顔が可愛かった。先輩は、「ありがとう」と笑った。

「樹くん、お願いします!」

 小学校高学年くらいの男の子がやってきて、先輩に頭を下げた。

「いいぞ」

 先輩は笑って頷く。わあっと歓声をあげて、みんなが見に向かった。

「理央くん、行こ!」
「となりでみよ」

 手を取られて、俺も並んで座った。


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