あの日にまだ縋ってる19


くぬぎくん?」
「は、はい」

 お昼。呼ばれて、俺は顔を上げる。お弁当の向こうで、先輩が心配そうに俺を見てた。

「具合が悪いか?」
「い、いえ! すみません」

 首を振ると、先輩は箸を置いて、俺を見た。

「なら、なにか悩み事か?」

 あたたかい声で、俺は、思わず「実は、」と口を開いてた。

「剣道をしてみたいんです」
「そうなのか! いいな」

 ぱっと、先輩の声も顔も明るくなる。ありがたくて、肩がちょっと緊張に上がる。

「は、はい。でも……」

 押されるように言葉が継がれた。

「今から始めてもついていけないかもって……不安になってしまって」

 言いながら、情けなさに小さくなる。こんな後ろ向きなこと、言うなんていけないって思うのに。先輩を前にすると、出てしまった。

「そうか」

 先輩は、静かに頷いた。声には、非難とか刺がなかった。口元に指先を当て、先輩は目線を上に上げた。どうしたんだろう。俺は、そんな先輩を、不思議に思って、見てた。

「樟くん。今日、放課後に時間はあるか?」

 先輩の言葉に、俺は目を瞬かせた。



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