あの日にまだ縋ってる17


「おばさん、ありがとうございます」
「いいえ。また来てね」
「はい。おじゃましました」

 ご飯を食べて。俺はおばさんに頭を下げて、瀧の家を後にした。夜の月は高くて、白く星が散らばってる。瀧が、そっと俺の隣を歩く。手をずっと、やわらかく繋いでた。
 玄関の前で、瀧は俺を抱きしめた。

「明日」

 手に、そっと後頭部を包まれる。

「また迎えにいくから」

 するりと、髪を撫でられた。

「おやすみ」

 言葉の余韻のまま、玄関のドアの閉まる音を聞いた。
 鍵を閉めて、俺は、リビングに戻った。
 電気をつけて、中にはいる。気持ちがそぞろで、なんだかどこを歩いているかわからない。頭も足も、ふわふわする。
 ふと。
 テーブルにある、お弁当が目に入った。ふたをそっとかぶせたそれと、スプーンを見つめる。
 じわりとお弁当が揺れた。目がこわばって震えていた。ぎゅっと歯を食いしばる。

「う……っ」

 ぼろぼろと、涙が伝った。顔を覆った。

「うぅ、っ……」

 瀧。
 背骨がきしむみたいに、ふるえて跳ねた。嗚咽が喉をしめつける。
 大好き。
 馬鹿みたいに嬉しくて、どうしていいかわからない。
 けど。
 ……俺、何してるんだろう。

「君に笑ってほしいんだ」

 声がふっとのぼる。
 嗚咽が高く漏れる。帰り道が、どうしてもわかんなかった。


 《完》

 
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