あの日にまだ縋ってる16
頭が割れるみたいに痛い。
あれから、何とか家に帰ったけど、玄関のドアを閉めた瞬間気が抜けた。たたきに座り込んで、息をついた。
「けほっ……」
呼吸のかわりに咳が出る。胸のあたりがあやしくて、嫌になった。動悸がして、視界が白くなる。頭の中を掻き回されてるみたいだ。
「う……」
口の中がぎゅっと絞れて苦くなる。ついで酸っぱくなってきて、ふらふら、俺はカバンを探った。袋をあてがうと、ゆっくり息をする。倒れたいけど、今は危ない。
全部が揺れてて、気持ち悪い。
玄関の灯りが眩しい。手が冷たい。口の中に、胃の中のものが戻ってきて吐き出す。
「げほっ……」
ひとしきり吐いて、俺はまだ玄関で震えてた。寒い。もうすぐ、夏が来るのに……。熱っぽいのに、寒い。がたがた身体が震える。
これは、だめかもしれない。つとめてゆっくり、息を吐きながら思う。明日、学校行けないかもしれない。
俺は、スマホをそっと手に取る。ふうと息を吐いた。滲んだ涙を、瞬きで流す。
「……連絡しなくちゃ」
いつもなら、ギリギリまで迷う。
けど、そんなことしたら、迷惑かけちゃう。俺はトークルームを開いた。
「先輩」
俺は、先輩に、明日は学校を休むことを伝えた。もうお弁当、仕込んでくれてたら、どうしよう。
「また、迷惑かけちゃったな」
泣きたい気持ちになる。手提げの中の水筒を、どこか感じてた。なんでちゃんと出来ないんだろう。身を縮めると、涙をぬぐった。
鼻をすすって、なんとか起き上がるための体力を蓄える。手の甲が涙に濡れてた。
スマホが震えて、先輩からお返事が来た。
「わかった」
「ゆっくり休んでくれ」
「おだいじに」
優しい言葉に、口元が和らいだ。ぎゅっとスマホを握った。
先輩、ありがとう。
俺は身を起こそうとして……座り込む。
「……
頭に浮かぶのは、ドアの隙間から見る、瀧の白いシャツ。
「……伝えたほうが、いいよな」
明日、学校に行けないなら、伝えておかないと。なんだか、自意識過剰な気もするけど……もしものことがあるから。
俺は、そっと電話帳を開いた。
トークルームも消しちゃったから、電話をかけるしかない。……一度決めたことなのに、なんだか情けないけど。俺は瀧に電話をかけた。
しばらく待ったけど、繋がらない。
そりゃ、そうか。
瀧は電話しないし、いきなりかかってきたって出られっこない。塾だと思うし。
「そもそも、そんなんじゃないだろうし」
瀧が来てくれてるのも。
俺は電話を床に置いて、立ち上がろうとした。
スマホが床で、激しい音を立てた。
「えっ」
画面には、『瀧』の一文字があった。
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