あの日にまだ縋ってる14
「……
瀧が、俺の肩を掴んでた。湖面みたいな瞳の、表情は見えない。きれいで、息の仕方も忘れる。目が離せなかった。瀧は俺の肩を引いて、道の端へ連れて行った。ちょうど曲がり角で、人の波から離れる。
壁が背に当たる。瀧はじっと俺を見てた。
「
呼ばれて、詰めていた息が漏れる。胸が、すごい速さで脈打ちだした。堪えていた涙がじわりと滲んだ。
光を背負って、瀧の顔は、はっきり見えない。長い指先が、俺の頬に触れた。
「どうしたの?」
目元を、やさしく撫でられた。思わずぎゅっと目を閉じると、そっとくすぐられる。
「や、」
「何か、苦しいの?」
瀧の声が、静かに降りてくる。声は穏やかで優しい。胸が苦しくなるくらい。
やめて。
俺は、必死に首を振った。声が出なかった。出したら、息ができなくなりそうで。
ずっと、黙って、首を振り続けた。
お願い、瀧……。もう、これ以上。
瀧は、黙ってた。けど、そっと、俺に、身を寄せた。柔らかい髪が、俺のこめかみに触れる。抱きしめるより、ずっとやわらかく、引き寄せられた。
「理央」
俺の目から、涙がこぼれた。ひっと、高い息が漏れる。背中を優しく叩かれた。
怖い、瀧。
押し返そうとして、手が震えてた。瀧と自分の身体に挟まれて、ひどく冷えてるのがわかった。首を振ると、頭を手で包まれた。
「たき……」
呼んだ声は、音になっているか、わからなかった。
生徒たちの声が、向こうで聞こえる。こっちは見えないと思う。けど、怖くて、俺は泣いてた。
「大丈夫」
瀧が、俺を抱きしめる。俺は何度も首を振った。体が震える。
「離して」
瀧のフェロモンが、やさしく俺をなだめてくる。
それでも俺は、ずっと、繰り返してた。
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