あの日にまだ縋ってる12
担任の先生が入ってきて、俺を見た。
それから、連絡事項を話しだす。
ちょっと気になって、俺はメモを取りながら先生を見てた。
「じゃあ、今日も頑張るように。――
呼ばれて、俺は立ち上がった。先生は「ああ」と手を払うように指さした。
「荷物も全部持ってきなさい」
そう言って、外に出ていった。俺は、慌ててカバンを持って、あとに続いた。
先生は、前を行った。はあ、と呻くみたいにため息をついた。どこへ行くんだろう。
廊下を行って、先生は、空き教室で止まった。鍵をあけて、中を指さした。
「入りなさい」
俺は、おずおずと中に入る。しめっぽい匂いがした。当たり前だけど、誰もいない。
ここに、何かあるのかな。
俺はきょろきょろ、教室を見回していると、先生が「あー」と言った。
「お前は、今日から、ここで授業を受けるように」
「え……」
「昨日のことで、皆、不安がっていてな。間違いがあってはいかんし、先生方と話し合ったんだ」
あ。
俺は、真っ赤になった。首まで熱い。カバンを握りしめて、汗があふれた。
「お前も、安心だろう。特別な措置だ。ここにいなさい」
俺は、うつむいてた。
「樟。いいな?」
「はい。……ありがとうございます、先生」
「うん」
先生は、頷いて去っていった。
扉が閉まる音が響いた。余韻も消え、しんと静まり返った部屋で、俺は立ち尽くしてた。
……よかった。
びっくりしたけど、正直、ホッとしてる。これなら、皆に、迷惑かけなくて済む。
「頑張らなきゃ」
胸の前で、ぎゅっと拳を握った。
チャイムが鳴って、俺は机をひとつ、引っ張りだして、そこに座った。