あの日にまだ縋ってる11


「おいしい」

 俺は目を見開く。手の中のケークサレをそっと見下ろした。いい香りのそれは、不思議な食感で、すごく食べやすかった。小麦粉じゃないみたいだ。

「うまっ」
「なんだろ? 見た目よりあっさりしてるな」

 机の上に広げて、皆で頂いてる。菓子パンのふくろが周りに積まれてた。

「もう一個もらっていい?」
「うん」

 俺はゆっくり食べながらうなずいた。これなら、俺でも食べられる。野菜も美味しい。――優しい味だった。
 先輩って、変な人だな。あんなに強そうなのに、いつも優しい。お菓子も優しい味なんだ。
 ケークサレはすぐになくなってしまった。俺も、一切れ食べ切ることができた。お腹に手を当てて、ホッとする。
 優しい味を、昨日から食べてるな。
 ふっとよみがえった香りに、慌てて首を振った。

理央りお?」
「何でもない」

 ほしが、心配そうに俺を見てる。俺は笑った。


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