友達の幼馴染への感情がヤバい(希結×那智)


「あ」

 休日。
 時間つぶしに入った本屋で、那智さんと行きあった。

「こんにちは」

 那智さんは俺に会釈した。俺もつられて返した。

「那智どうした?」

 奥にいたいかつい男が、那智さんに尋ねた。小脇に、楽譜をたくさん抱えていた。

「うん。希結のお友達」
「まーた希結ちゃんの話か〜?」

 男は笑って、那智さんの肩に肘を置いた。揺らされながら、那智さんは、はにかんでいた。
 俺は、目を見張った。
 ……距離、近くないか? 希結にちゃん付けといい、命知らずな男だ。
 二人がじゃれる中、俺はあたりを見回していた。
 男が会計に向かって、俺と那智さんが残った。

「えっと……さっきの方は、お友達ですか?」
「うん」

 念のため尋ねると、那智さんはあっさりと頷いた。
 那智さんは、近くで見ると尚更美形だった。澄んだ目が、まっすぐ俺を映してた。那智さんは首を傾げた。

「希結の、……ええと」
「あっ。鈴木です」
「鈴木くんは、勉強の本を見に?」
「あ、まあ……そうですかね」
「えらいなあ」

 那智さんの曇りない笑顔に、俺は目を泳がせた。

「えーと那智さんは……」
「えっ?」
「あ、すみません! 馴れ馴れしかったですよね! 希結から聞いてつい」

 俺は慌てて、頭を下げた。那智さんは「いえ」と、首を振る。

「俺こそ名乗りもせずすみません。……希結、俺のこと話してたの?」

 俺は顔を上げる。背筋をただして、

「はい」

 と何度も頷いた。

「希結はしょっちゅう那智さんのこと話してるんで!」

 那智さんは目を見開き、顔をぱっと赤く染めた。

「そっか」

 と笑って、頬をかいた。
 俺は目を見張った。
 那智さんの纏う空気が、やわらかくなった。凛とした輪郭が、甘い。思わず一歩踏み出した。

「あの、那智さんって……」
「仁、おまたせ」

 大がやってきてしまった。

「どうも」
「あっ、こんにちは」

 大は、那智さんとざっくりと挨拶を交わす。大は不敵にも、那智さんに握手を求めた。那智さんが応える中、俺は身を縮めていた。
 那智さんの友達も戻ってきて、お開きになった。去り際に大が、

「今度良かったら希結の話聞いてください」

 と言った。那智さんは顔を明るくし、

「ぜひ!」

 と大きく手を振った。人混みに見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。俺もつられて笑ってしまった。手を振っていると、大が腕組みをした。

「うーん」
「どうした?」
「予想、当たっちまったかも」

 大は俺に身を寄せた。

「あの人、オメガだ」

 大の囁きに、俺は目を見開いた。大の顔を凝視する。

「それって……」
「俺たちの予想であってるってこと」

 大は、それ以上言わなかった。
 雑踏の音が大きくなった。


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