あの日にまだ縋ってる9


 車中で、母さんたちが、ずっと楽しげに話してる。俺は窓の外をずっと見てた。隣りにいる、理央の熱を感じながら。
 理央は窓の外を見てたけど、具合が悪くなったのか、すぐに前に向き直った。俺が見てることにも、気づかないみたいだった。横顔は、血の気が引いて、真っ青だった。
 また、痩せた。理央は、いつも隣りにいるとき、俺の方をずっと窺ってた。けど今は、壁を感じる。まるで見ないようにしてるみたいな、そんな感じだった。

「理央ちゃん? 平気」
「全然、平気です」

 ミラー越しに、母さんが理央に尋ねる。理央は、顔をぱっと明るくして、笑った。それからは、ずっと笑顔を崩さなかった。手を膝の上で、肌が白くなるくらい、固く握りあわせたまま。


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