君と叶える世界線


「男だったのかよ!」

 叫ばれて、十年越しの恋が玉砕した。

英里えいり、飯くお」
「おー」

 授業が終わって、俺は弁当片手に英里の元へ歩いていった。英里は、問題をとき終わってなくて、思考の只中だ。
 俺は隣に立って、のんびり待った。

「圧強い」
「なら早くとけよ」
「うるせえな」

 笑ってノートを閉じた。解かないのか聞くと、「集中切れた」と返ってくる。ふうん。英里はリュックを背負うと、歩き出した。

「購買行くぞ」
「はいはい」

 後をのんびりとついて行った。通りすがり、女子たちは英里を嬉しげに眺めてた。わかる、かっこいいよな。俺は共感した。
 たぶん、明日こいつが侍になってても、同じこと皆言うと思う。ただ美形ってんじゃない雰囲気が、英里にはあるんだ。
 まあ、侍って言うより、スーツのが似合うけど。べたぼめだな。自分でもちょっと呆れる。

さき、お前何にすんの」
「俺は、余ってるのでいいわ」

 人の波に押されながら、英里が尋ねてきた。俺は、適当に答える。頭一つはゆうに高くて体格もいい英里は、この手の競争に負けたことがない。
 だから俺も大して焦って頼まなかった。食えないわけじゃないけど、弁当だけで事足りるし。

「とりがいのねえやつだな」

 英里は呆れながら、パンを勝ち取った。俺に、メロンパンを渡してくる。
 俺の好きなの、結局選んでくれるんだよな。
 そういうところ、たまんなくぐっとくる。

「じゃ、行くか」

 戦利品を腕に抱く英里はごきげんだった。笑うと、一番映える。
 いいな。
 隣を歩くと、無性に手をつなぎたいって思う。
 俺も男子高校生だ。大好きな人には、触れたいって思う。
 けど、そんなの友達の距離感じゃないから。

 俺は目をそらして歩いた。

「なあ、咲」
「うん」

 中庭に向かいながら、俺達は飯を食っていた。

「今日、お前んち行っていい?」

 弁当から顔を上げ、隣を見ると、英里が期待に満ちた目で、俺を見てた。浮かれた様子に、悲しい気持ちになる。

「今日、はなちゃんいるんだろ?」


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