実験場


「別れた」

 そう言って憮然としてる攻めに、受けは苦い顔をした、「また?」とか言わないのが優しさだ。今度は付き合って3日だぞ。かなり重症だ。

「そっか……辛かったな」
「いや、3日しか付き合ってないし」

 ドライすぎるだろ、そりゃ、知らない子だったらしいけど。

「はやく次作らねーとだけど、だるい」

 スマホをいじりながら、はあと息をつく攻め。受けは物憂げな気持ちを隠し、提案する。

「一回休んだら?」
「そしたらもっとうざいから」

 攻めはモテる。それはもう、日常生活に支障をきたすレベルでモテる。だから、日常生活を守るために彼女を作っているのだ。
 でないと、どんなに断っても女の子は「諦めない」と言って、やってくるし、最悪攻めの目の前で、「攻めくんは渡さない!」と大乱闘になる。
 中1にして上級生による自分のための修羅場を経験した攻めは、すっかり恋愛不信となり、カムフラージュに彼女を作ることにしている。
 とはいえ、彼女も、好きだから欲求は出てくるわけで、「もう少し会いたい」とか「早く連絡返して」とか、「あのこ誰?」とか色々聞いてくるのだ。
 それがうざくて仕方ないらしく……。
 どんどん彼女が入れかわるスパンが短くなってる。それで遊び人って異名もついて、「それでもいい!」という子か遊びで付き合いたい子ばかり来るようになった。
 食傷もいいところらしい。
 とはいえ、攻めと付き合った子は不憫だと思う。
 攻めがあんまりかっこよくてモテるから、自分の気持ちに振り回されてしまう。その態度は、攻めからしたら、「俺と付き合いたいんじゃなくて自意識と付き合いたいか、俺をいいようにしたいだけじゃん」と鼻白んでしまう。
 そんなことでもないけど、攻めにはわからない。

 でも、攻めがしんどいのも事実なので、どうすることもできなかった。
 攻めは恋愛ではグダグダだけど、本当に友達がいがあって、勉強や部活とかも頑張ってるやつで、けど、それが全部モテすぎるせいで脅かされる。
 煩わされたくなくて、恋人作ってるのも知ってるから。

 とりあえず、仮想の彼女でも作れば、と思うが、女の子のネットワークと執念はすごい。

「SNSとかも見たけど、痕跡なかったし、そんな子いないんだよね?」と俺にまで詰められたのには震えた。

 攻めがもう少し過ごしやすくなればな……というのが受けの目下の悩みだった。

 そんなある日、攻めに告白された。

「なんで?」

 正直俺と付き合ってもメリットないぞ。と尋ねると、攻めは

「もうしんどいから、一番好きなやつと付き合いたい」

 お前には悪いけど。
 そう言われて、受けは戸惑った。

「えっと。つまり、彼女のふりしろってことだな」
「どっちでもいいけど。お前がいい」

 そうとう来てるな。受けは心配になった。俺が付き合いやすいのは、友達だからだと思うんだけど、まあ今疲れ果ててる攻めに言うことでもないし、攻めはそれくらいがいいかな。

「わかった。俺がお前のこと守ってやるよ」

 そう言って、受けは笑った。
 バレたらけっこうヤバいけど、最初からこうしてればよかったんだよな。
 俺が失恋してしんどいとき、夜中でも飛んできてくれて、ずっと話聞いてくれた。その恩は忘れてない。
 こいつのこと、俺が守ってあげよう。
 そう受けは決意した。

 ◇

 恋人として、攻めの事を大切にしている内に、受けに沼っていった攻めにガチ告白されるまで、あとひと月である。

 《完》
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